HidekiIshimoto

カンダハールのHidekiIshimotoのレビュー・感想・評価

カンダハール(2001年製作の映画)
5.0
たまたま古本屋でマフマルバフ監督がこの映画製作後に出版した『アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない 恥辱のあまり崩れ落ちたのだ』を見つけた。地雷についての部分だけでも暗澹となるこのレポートの冒頭にマフマルバフ監督は「この苦い題材があなたの心地よい生活に無関係だと思うなら、どうか読まずにいてください」と書いている。
以前そのアフガンあたりを取材したドキュメンタリー番組で、人形爆弾により全身大やけどを負った子どもが薬品もなくただ水洗いするしかないという場面を観た。激痛に絶叫し、のたうちまわる子どもと、我が子のそばで立ち尽くすしかない父親の形容しようのない表情はこれまで観たあらゆる映像の中で最も怖ろしいものだったと今も思う。カナダの撤去チームがあまりの酷さに諦めて帰ったという無数無秩序に仕掛けられた農地の地雷は、レポートから20年近く経ちタリバン政権が消えた今でも農民や子どもの手足を吹き飛ばしているんだろう。
そもそもタリバンとは大国の利権争いが生み出したものであり、俺らはたまたま大国に媚び続ける日本に生まれただけとも言える。この映画はそんな俺らの心地よい生活とは関係ないようだけど現にある世界への、この心優しい監督らしい詩情と祈りの爆弾が炸裂しまくった傑作だ。