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不死身ラヴァーズのmasayaのレビュー・感想・評価

不死身ラヴァーズ(2024年製作の映画)
4.3
運命の人が、想いが通じた瞬間に物理的に消えてしまう。こんなことってある?でもリノは全然へこたれない。何度も出会うその人に想いを伝えよう。その人が忘れたら、何度でも伝えよう。間違ってるかも知れない、滑稽かも知れないそれでも。何せ恋は無敵なのだ。そうだよね?

シュールすぎる設定、エキセントリックすぎる主人公にはじめは「お、おう・・」ってのけぞるんだけど、見上愛さんは動きのある絵で最大限に輝き続けてていたし、少しずつ提示されるひっかかり、違和感が何かあるよね?のワクワクを持続させた。巧い。

コミカルで極端なファンタジーのように描いているけどこれ誰にも似たような経験あるよね?ある日突然消滅した運命の人居るよね?って普遍的な青春映画が生まれてる。ディテールは全然違うけど、私の話、と観る人に思わせる力があった。

ただでさえ絶対正義のギター女子にC7を歌わせて恋に落ちない男が居るわけない、駅の跨線橋階段のシーンがすごくすごく良かった。コードを押さえる指に目をやりながら、何度も何度も視線は彼を確認する。一番の私に恋して消えてほしい。やっぱり消えないで。



5/18 再び観た。
相手に想いを伝える強さは、今までの懸命な積み重ねあってこそ。誰かを思いやる優しさは、悲しみを知っているからこそ。消したい過去が私をつくる。みっともなくて情けないすべての黒歴史を肯定する、ハイテンション豪速球の人生讃歌。

消えた、消した記憶の筈なのに、彼女は全力疾走の仕方を知っているし、C7の歌詞もコード運びも知っているし、多分アイロンも上手にかけられるようになっていて、この胸の疼きが何を意味するかも解っている。全てを持って差し伸べた手の先の人は、今度はきっと消えることはない。

場面ごとに、衣装ごとにどんどん変わっていく見上愛さんの表情の多彩さには惚れぼれする。相手役の佐藤寛太さんもそちら側。受ける役回りの青木柚さんの安定感が画面を支えてた。優しさの中の哀しみを知る男。

リノが別れ際に毎回告げる「明日も健やかでね!」が、さりげないようでいて彼女が今までの恋と失恋で得た優しさが詰まっていて震えた。明日には消えてるだろう、今日だって伝わってないかも知れないその言葉を毎日掛け続ける。庭に咲く花に水をあげるように
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