回想シーンでご飯3杯いける

不死身ラヴァーズの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

不死身ラヴァーズ(2024年製作の映画)
4.0
「くれなずめ」や「ちょっと思い出しただけ」でがっつり心をつかまれてしまった松居大悟監督による新作。

今回は何と言っても、映画初主演になる見上愛の魅力に尽きる。彼女が小学生の頃に入院先の病院でひと目惚れした「甲野じゅん」という名前の少年。しかし、両想いになった途端に彼は忽然と姿を消してしまう。その後も、部活動、バイト先、大学のキャンパスと、様々な場所で甲野じゅんに出会うのだが、両想いになった途端に彼は姿を消してしまう。

それでも「好きです」「好きです」と甲野じゅんを追い続ける主人公の馬鹿みたいにがむしゃらなパワー。これ、ひと昔前なら男が主人公になる話だと思うんだけど、時代は変わったのだと思う。

あいみょんの歌詞が男子口調である事を思い出す。その手法の最初の成功例が「君はロックを聴かない」だと思うんだけど、歌詞では「君はロックなんか聴かないと思いながら、少しでも僕に近づいてほしくて、僕はこんな歌であんな歌で、恋を乗り越えてきた」と、無防備なまでのがむしゃらさを露にする。本作で三上愛が演じる主人公には、そんなあいみょんの歌詞の世界に通じる、恥ずかしいぐらいの真っすぐさがある。

恋愛映画と言えば、男と女の立場は概ね固定されていたけど、こうして男女の立場が逆転したような作風が生まれてくるのは、とても自由で楽しい事だと思う。

と、ここまで書いた所で調べてみたら、原作を持つ本作は、コミック版に登場する人物を敢えて男女逆にして映画化したそうで。これは恐らく松居大悟のアイデアなのだろう。いかにも彼らしいユニークな力業だ。