KnightsofOdessa

猫とカナリヤのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

猫とカナリヤ(1927年製作の映画)
3.5
[アナベル!後ろ、後ろ!] 70点

8年ほど前に私の中で激しいサイレント映画ブームが巻き起こった時に取りこぼして以降、万年ウォッチリストの肥やしとなっていたので、今回のサイレント映画ブームに乗じて。バカでかい城に暮らしていた富豪の老人が死に、20年後にその遺言が開封される。そこには、故人の遠縁に当たるアナベルが遺産を全て相続する旨が書かれていたが、そのために自身が狂人でないことを示す必要があった。という『犬神家の一族』とホラーハウスが融合したような作品。驚いた場面で暴れる字幕、長い廊下を歩く主観ショット、脱走した精神病院患者を追う看護師の男、カラクリだらけの城、アナベルを襲う悪魔の手、など楽しい演出/設定がてんこ盛りで良い。しかし、親戚たちがアナベルの命を狙う…という展開にはならず、臆病な従兄弟ポールや嫌味だけ言ってくるスーザン叔母さんなど、遺産問題そっちのけでホラーハウスにビビり散らかす面々を眺めるのは最早ギャグの域。スーザン叔母さんはビビリ過ぎて古城から猛ダッシュで逃げ出す始末。

就寝中にダイヤのネックレスを奪われたアナベルが、それに気付いて叫ぶシーンが超お気に入りだが、その顔は『ギムリ・ホスピタル』の青年に似ている気がする。流石はガイ・マディンと言ったところか。ちなみに、レニは本作品の人気に乗じて同じようなテイストの『最後の警告』を作らされ、急逝によってそれが遺作となってしまった。また、『魔神ドラキュラ』にいくつかの小物が流用されているらしいが、個人的には同作のほうが面白いと思う。
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