『パルプ・フィクション』の中にタキシードに蝶ネクタイ姿で現れたハーヴェイ・カイテルが揚々と演じる、コードネーム“ザ・ウルフ“と呼ばれる掃除屋が出て来る。
彼はただの掃除屋ではなく、殺人現場の完璧な現状復帰と死体を片付けるプロの後始末屋である。
で、短時間で見事な後始末振りを見せた。
始末屋と言えば、ザ・ウルフことハーヴェイ・カイテルを思い出すくらいインパクトが強かった。
《ウルフとウルフ》
本作においても“ウルフ“は面倒事の始末屋のことで「WOLFS」というタイトル通り、そんな個人営業のウルフが処理現場に同時に2匹登場してややこしい展開になる。
監督は、トム・ホランド主演のスパイダーマンシリーズで完全ブレイクしたジョン・ワッツで、エキサイティングなクライムアクションコメディとして上々の完成度を見せる。
2匹のウルフは、ジョージ・クルーニーとブラッド・ピット、R指定のオーシャンズなどと呼ばれている遊び心とクールなノワール魂溢れる一級品。いい年こいた2匹のウルフは無性にかっこいい!
そして私がこよなく愛する一夜の出来事ストーリー!
都会の少し端っこの方の高級ホテルで起こった奇怪な事件、一見地味な舞台劇のようなオープニングから、荒手のぶっち切りアクションドラマへと一気になだれ込んで、夜景の中でグイグイシフトチェンジして行く流れが圧巻。
【ウルフズ】
Appleオリジナル映画は、どれも内容に重きをおいているのでドラマの質は高いが、商業ベースでは成功しているとは言い難い。
ところが「ウルフズ」は、早くもシリーズ化の声が上がるくらいエンターテイメント感充分な傑作。いい感じでおもしろい一本
死体処理や惨状クリーニングを生業とする危険な稼業の孤独な一匹狼が、トラブル発生現場に何故か二人も現れて、怪しい空気に包まれる。
それも束の間、現場から麻薬がごっそり出てきたことから次なる危機が一匹狼たちを襲い始める…
二転三転するスリリングな展開に、主演2人のコメディ風味の軽妙なやりとりを挟みながら、ワッツ監督の上下動の激しいキレ味とテンポが冴え渡る。
《アクション》
クルーニーもブラピもいい加減オッサンなので、アクロバティックなアクションは薄目で、コンビネーション&ガンプレイに重点がおかれている。
二転三転する部分や、これ以上ストーリーには一切触れられないので、よく出来た脚本とお遊び部分は必ずや気分よく楽しめることをお約束します
《世界一》
今作でブラピをして、世界一セクシーな男と言わしめたクルーニーの身のこなしと特有のエクスプレッションコントロールの色気はプンプン漂いまくっている気がする。
男目には、イケオジ度数300%って感じです。
※内容にほぼ触れられないので、今回のパブリシティについて言っておきたいことなど記しておきます。↓↓
◾️雑記 『配信限定の落とし穴』
クルーニー&ピットというビッグネームの共演で話題性先行で劇場拡大公開が決まっていながら、何と日本では理由も曖昧なまま急遽配信限定になってしまった今年最大のアクシデント作品でもある。
Apple tv+やソニーピクチャーズの裏事情や謎そのものには興味が無いが、こんなサブスク公開によるトラブルの余波が他の配給元などに及ばないかが心配だ。
《興行不振》
ストリーミング業界の闇もあるが、世界的な映画館興行の不振もいよいよ深刻になってきているということでもある。
DC、マーベル系で派手な花火を何年も打ち上げすぎて、映画本来のクオリティをストリーミングやエンタメ制作のインディーズ企業に譲って、自ら土壌を切り崩してきたハリウッドの罪は大き過ぎるのかも知れない。
映画は消滅するエンターテイメントでは無いが、ビジネス形態そのものが大きく変わっていく過渡期には違いない。
・多様性によってビジネスとしてしのぎを削るのは結構なことですが、映画ファンに寄り添う気持ちは忘れないでほしいですね