耶馬英彦

オーメン:ザ・ファーストの耶馬英彦のレビュー・感想・評価

オーメン:ザ・ファースト(2024年製作の映画)
3.0
 よくわからない。ホラー映画のはずだが、特に怖くもなかった。映画「オーメン」シリーズを観ていないと、よくわからない作品なのかもしれない。観ている人は、多分、最後のダミアンの名前が出るシーンで、おーっ、となるのかもしれないが、当方は、へえ、だった。
 キリスト教もイスラム教も仏教も、宗教それ自体には特に問題はない。問題になるのは教団という人間集団である。個々の私利私欲が、教団という集団に収斂されて、教団の存続と繁栄のためにはたらくようになる。ときに行き過ぎた行為に走るのは、カルト教団やイスラム教原理主義の集団がしでかす様々な報道で明らかだが、キリスト教も例外ではない。
 教団という集団になると、集団をまとめるためにヒエラルキーが必要となる。つまり権威だ。最高の権威はもちろん神の権威だが、ヒエラルキーの中で、それぞれの立場に権威が与えられる。そして各自は教団の権威、神の権威を守る役割を与えられるが、同時に自分の権威も守ろうとするのは、人間として当然の成り行きだ。

 本作品は、カトリックの教団が存続と繁栄のために、ある奇跡を起こそうとする物語で、所謂マッチポンプである。マッチポンプは往々にして上手くいかず、その欺瞞が暴かれる。すると信用が失墜し、権威は地に落ちる。ローマカトリック教会がそれほど愚かだとは思えず、本作品は現実味に乏しい。
 ビル・ナイまで駆り出して、なんとかカトリック教会の権威の重味を表現したかったようだが、マッチポンプの設定のせいで、逆に教会幹部の軽佻浮薄が浮き彫りになるという結果を招いてしまった。バチカンからクレームは来なかったのだろうかと、心配になってしまった。
耶馬英彦

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