すえ

デ ジャ ヴュ デジタルリマスター版のすえのレビュー・感想・評価

5.0
記録

時間の交錯をこんなにも容易にやってのけるのはシュミットの手腕だろうか、癖のない編集で過去と現在が溶け合ってゆく過程が素晴らしい。鈴(音)という装置が過去の侵食の始まりなのだが、いつの間にか現実が過去に呑み込まれていることに気づく。シュミットの時間感覚を味わえて至高、デザインも美しい。

我々は画面の中の既視感に襲われる、サイコロや人間の顔面などのそういったものに。最大のデジャヴュは斧のイメージにあると思う。序盤、トイレの洗面台で主人公が髭を剃ろうとするところ。ここで彼はふたつの鏡に真っ二つにされている、切り離された虚像の顔面はまさに死の表象であり、その縦に二分された虚像は斧的イメージを喚起するのではないか。そのデジャヴュに我々が気づくのは斧の登場の瞬間であり、幾度も振り下ろされる斧を目にした瞬間である。そうして序盤の斧の予示に、主人公と同様、デジャヴュに悩まされるのだ。

ラストは過去の繋がりとしての鈴を、珊瑚の死骸で葬る。つまり、過去を過去の記号で埋葬しており、デジャヴュからの克服とも考えられるのではないか。

2024,81本目(劇場24本目)4/7 シネ・ヌーヴォ
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