このレビューはネタバレを含みます
面白かった。
本作はアンブレイカブルの精神的続編(ただし訴求力は減退し、代わりにエンターテイメントとしての面白さがマシマシになった)みたいな印象を受けた。
何かが欠けていて、そのことに苦悩し、それを解消するために犯罪行為に手を染めている男の話だからだ。ミスターガラスは自らの存在意義のためだったが、本作の主人公は怪物(マジのやつではなく比喩)を倒すことだといえる。その怪物とは、感情がない自分のことだ。ラストカットが主人公の満面の笑みで終わることから、感情を得たことが大事なことだとわかる。
個人的にはアンブレイカブルの方が好きなのだけど、本作の方がしっかりとエンターテイメントとして面白い(どちらもそれぞれの良さがある)。コンサート会場からの脱出、脱出後のサスペンスなど、緊張感とこれからどうなるんだろうという期待がずっとあるので楽しい。
シャマランはいつもこちらを楽しませようとする工夫をしているからすごく好感が持てる。よくシャマラン映画で言われる尻すぼみというのは、途中までジャンル映画由来のフックがあって面白い話をやっているが、最後にミニマルなスケールの個人的な話に収束するからだろう。ハプニングなんかが特にそう。だけど、いつもそのジャンル映画的な部分は寓意性を持っていて、それが主人公の抱えるトラウマの表象だったりするので、最後のドラマ部分にカタルシスがある(テーマ・主題を話やサスペンスに絡めるのが異様にうまいからなせる面白さだろう)。だからシャマラン映画はいつも面白い。あとけっこうちょけてるところも良い。
前作のノックはワースト級の内容でがっかりしたのだが、本作はシャマラン映画でも上位に入る面白さがある。話も良かったが、主人公の主観的なカメラワークや奥行きのあるショットなど映像的にも面白い。