「推しが性犯罪者になった」、どうやって心の整理をつけよう…同じ傷を負ったファンたち一人一人にインタビューをしよう、というドキュメンタリー
監督もオタクの1人として同じオタクたちにやりきれない事実と真摯に向き合った姿勢と題材が素晴らしいと思う。
重たい題材だが、沈鬱になり過ぎないようコミカルな場面や軽口を挟んでくれるのでしんどくなり過ぎない。同時に「性犯罪は許されない」という態度は一貫しているのでそこも安心感がある。作品と作者なら切り離せるかもしれないが、推してる対象が作品を生み出す本人そのものだと切り離しようがないのだな、という当たり前の事実の重さを感じた。
観客である私自身は二次元のオタクなので、生身のアイドルや俳優などリアルな人間を推すひとたちの心の葛藤を自分のこととしては感じるのは難しかったし、他人にいろんなものを仮託させすぎでは?という気持ちも正直感じた。ただその切実さに敬意に似た何かも感じてしまう。現実であることの迫力、とでもいうのだろうか。当たり前だがフィクションなら殺人鬼でもレイプ犯でも差別主義者でもキャラクターとして魅力的になることはいくらでもあるわけだから。
この作品でも芸能人と政治家が類比的に語られるシーンがあったが、人気商売というか人から支持されることが重要であると、与える影響の大きさがすさまじいのだなとおもった。同時に、政治家と同じ意味での公共性がアイドルにあるのか?というと明らかに違うと思う。アイドルたちが所属する芸能プロダクションの構造的な問題を目の当たりにしている日本の状況を慮ると、「犯罪をした推しの向こうにある社会」にも思いを馳せざるをえない。