微妙でした。
穴のあるプロット、不穏なカメラワーク、棒読みの俳優。予想通りの黒沢節。
この黒沢節を、楽しめるか、そうでないかの二択だと思うが、自分は微妙なところだった。
まず、やっぱり脚本の穴の多さが気になる。
転売する時のハンドルネームが一つしかないというのも、まずおかしい。ハンドルネームを使い捨てていけば、恨まれたり特定されたりすることはないはずだ。(まぁ、複数もつと話が成り立たなくなるのだが)
それに、転売屋にしてやられた、友情の決裂、ストレスの発散など、襲ってくる人たちの動機が弱すぎる。そんな理由で銃で殺しにかかるだろうか？
また、掲示板で特定するなど、まだそこで止まってる？というインターネット描写。
そこかしこにあり、引っかかるプロットの穴。ここら辺がやはり、序盤から中盤にかけて物語に入り込めない要因だった。
しかし、後半から、サノが「助手ですから」という理由だけで、襲撃者たちを木っ端微塵にしていく所から、あれもしかしてこれコメディ？と思い始め、そこからはそれなりに楽しめた。(序盤のホラーっぽいムードもそれなりに楽しめはした。)
しかし、ガンアクションも、もっと面白くできたように思える。死に方が一辺倒でつまらない。地面でバウンドする死に方も、もっと派手にしてほしかった。
段々菅田将暉が暴力に順応していくのだが、それが案外あっさりしているというか、カタルシスはあまりない。
黒沢節全開のラストも、そうですか、と言った感じで、あまり乗れずに終幕。
そして、サノが最後に菅田将暉に渡すハードディスク、あれはなんなんだ？あれがあれば大丈夫って、何が入ってるんだ？
それに、なんであんな凄惨な戦闘のあと、転売商品の確認なんてするんだ？
などなど疑問は尽きない。
正直、黒沢清も、わざと穴を作っているんだろう。穴のある、不完全な作品が趣味なのだろうとは思う。けれども個人的には、そうした趣味が出ていない「トウキョウソナタ」や「cure」の方が好みではあった。
本作は、シリアスとしても、コメディとしてみても、微妙な仕上がりで、良作とは言えない。変な映画でした。
正直黒沢清だからと言って、まぁいつもの黒沢さんだから、と、評価が甘くなっていないか？とは思う。演出や、カメラワークは、悪くないのだから、黒沢清は、演出に徹した方がいいと思う。
暴力への順応と、コメディなのかシリアスなのかよくわからない微妙な仕上がりという点で、ペキンパーの出来の悪い作品「バイオレントサタデー」や「キラーエリート」などを思い出した。
これが、アカデミー賞日本代表か。もっとあっただろ。
