「THE FIRST SLAM DUNK」とこの「ルックバック」で、日本のアニメーションが新しい段階に入った。というか、実写みたい、本物みたい、という「それ、アニメを褒めている事になっていないのでは?」という謎現象からようやく脱出し、アニメ(特に漫画の絵を動かす手法)ならではの躍動感を楽しめる作品が出てきたと感じる。
漫画家志望の少女2人の出会いを描いたこの「ルックバック」は、皆さん仰る通り、2人の出会いと、その後の藤野のリアクションがとても良い。使っている色の数はさほど多くなさそうだけど、その分、構図と線の躍動感が画面からはみ出すように迫ってくる。「実写みたい」ではなく、実写では描けない表現である。
58分というコンパクトな尺なのでストーリー展開も早く、この軽快さも、やはり漫画を読んでいる感覚に近い。
だからこそ、ある事件から連なるトリッキーな展開は、もう少しがっちり観客に理解できる描写にして欲しかった。1時間に満たない作品だからこそ、この数分間で入り込めないと、何とも言えないモヤモヤが残る。
原作や、原作者の他作品を読んでいる人だと、終盤の見え方もよりクリアになるのかもしれない。その辺がやはり一律1700円の特別興行作品(子供や障害者に対する割り引きなし)というか、固定ファン向けの作品なのだと感じてしまった。