螢

コーカサスの虜の螢のレビュー・感想・評価

コーカサスの虜(1996年製作の映画)
3.7
あまりの結末に、しばらく言葉が出なくなった。でも、限りなく「現実的な」ラストだとも思った。
チェチェン紛争で捕虜になったロシア人兵士二人と、彼らを捕らえていたチェチェン人の物語。

ロシア人兵士のジーリンとサーシャは、チェチェン人の捕虜になり、コーカサス地方の山間の貧しい村で、アヴドゥルという男に監禁される。劣悪な環境の中でも曲がりなりにも二人が生かされているのは、ロシア軍に拘束されているアヴドゥルの息子との捕虜交換に使うため。
アヴドゥルは、二人の食事の世話を自身の未婚の娘ジーナに、見張りを義理の息子のハッサンにさせる。

いつしか、二人と見張りのハッサンとの間には友情のような、そして、まだ若いジーリンとジーナの間には恋心といってもいいようなほのかな感情が芽生える。

けれど、個人的な感情はどうあれ、やはり敵同士で、いざとなれば殺しあう間柄。
ロシア側・チェチェン側それぞれの努力虚しく、思いもよらなかった出来事から捕虜交換が失敗に終わった時、悲惨な結末が訪れて…。

本作は1996年の作品ですが、2004年にチェチェン共和国独立派が起こし、子供を中心に386名が亡くなったベスラン学校占拠事件を思い出しました。
暴力の応酬は負の連鎖として途切れることなく半永久に続くのだと思うと、どうしようもなくやり切れない気分にさせられます。

コーカサス地方の雄大なのに荒涼とした風景が、また寂しさや虚しさを倍増させる。

まるで遺影のようなモノクロのポートレート映像とともに流れるジーリンの言葉がつらい。
「僕はせめて、夢の中で好きだった彼らに会いたいのだが、彼らは訪れない」
螢