マヒロ

蛇の道のマヒロのレビュー・感想・評価

蛇の道(2024年製作の映画)
3.0
(2024.122)
何者かに幼い娘を惨殺されたアルベール(ダミアン・ボナール)は、パリに住む日本人医師の小夜子(柴咲コウ)協力の元で事件に関与しているとみられる人間を拉致監禁し犯人を探し始め、やがて組織ぐるみの人身売買が絡んでいることが明らかになってくる……というお話。

同名のVシネマのセルフリメイクで、話の大筋はほぼ同じながら、舞台をまんまフランスに移し替え、哀川翔が演じていた役が柴咲コウになっていたりと、リメイクにあたり色々とアレンジが加えられている。
原作は、塾の先生である哀川翔が間違えたら“世界の法則がおかしくなる”という明らかに実在しない異様な数式を授業で教えていたり、コメットさんという変な暗殺者が出てきたりとかなり自由にやっていて、その珍妙さも一つの味になっていたんだけど、今作はそういうアクの強い要素は全て取り除いた分かりやすい話になっている。ここは良くも悪くもという感じで、ノイズなく物語に入り込めるとも言えるし、ランタイムが長くなっている割には余白があまり無いとも言える。

日本人キャストである柴咲コウと西島秀俊は、いかにも黒沢ワールドという感じの空虚な雰囲気を漂わせていて、特に柴咲コウはこれまで黒沢作品に出ていなかったのが不思議なくらいハマり役で、普通に日本語作品でも見てみたくなった。
一方でフランス人俳優達は、別に悪いわけではないんだけど世界観に馴染みきれていないように思えた。同じくフランスで撮られた『ダゲレオタイプの女』ではそこまで思わなかったんだけど、あちらはオールフランス人キャストだったので劇中でそのギャップが生まれなかったからなのかも。
原作で印象的だった廃墟に積まれたブラウン管のシーンなんかも再現されているが、サラッと映るだけで元にあった異様な迫力は感じられなかった。

元々ストーリー自体は分かりやすいものだったし、異国の地でリメイクするにあたって翻案しやすいものということでチョイスは間違いなかったと思うんだけど、独特の不気味さやおかしみが漂白されてしまい、作品としてはやや没個性なものになってしまっていたかなと思った。
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