豪雪地帯の田舎町。吃音がある小学6年生男子は光り輝くスケートリンクで「月の光」に合わせて滑る女の子に目を奪われる。それを目撃したのは恋人と暮らすため越してきたコーチだった。
光の映画だと思った。
物語の主な舞台となるスケートリンクの窓から差し込んでくる陽の光がやりすぎなぐらい眩しくて、氷上と3人を優しく包み込むから多幸感でいっぱいになる。
そんな息を呑むほど美しいスケートシーンと多くの説明的なセリフを排して大胆に観客に委ね続けた描写は一瞬たりとも見逃せない。
そして吃音と同性愛というついメインテーマにしがちな要素をあくまでも日常に溶け込ませたことで、根深く張った人々の差別意識まで白日のもとに晒し出す。
田舎すぎてクラス替えがないから吃音丸出しで音読しても日常すぎて誰も笑わないけど、その子の説明をする時は悪意を込めて吃音いじりしたり「フィギュアは女のスポーツ」て発言を子供に言わせたりする。
いやほんとね、わたしがいたところは授業の選択でフィギュアとスピードスケートが選べるんだけどほぼ強制で女子はフィギュアで男子はスピードスケートだからね。
雪国ほど踏みしめられる雪のように偏見は固められてしまっているという現実に胸が痛くなる。
けどそんな痛みを男の子役の越山敬達くんの笑顔が忘れさせてくれる。
なんなら正面よりも横顔と後頭部のまあるさのが魅力的。ほんとまあるい🤤
そして当たり前のようにコーチ面で滑る池松壮亮さんの存在感も忘れられない。
まるで引退したスケート選手が演技を猛勉強して演じているかのような日常感。
そんな日常感を余計に感じたいならちょうど陽が落ちる時間に外に出れる上映時間がおすすめ。
もしも映画そっくりの陽射しに襲われても、眩しいよりも嬉しいのがちょっとだけ勝つよ!