映画館でしか観られない映画。
とても面白いドキュメンタリーでしたよ。
児童養護施設で生活している児童をカメラが追います。
感動の押し売りがあったり、
「寄り添う」とか「家族ような関係」とか、紋切り型の言葉でまとめられたら、つまんないだろうなぁと思ってましたが、それは杞憂に終わりました。
下手なフィクションより、物語を想像させます。
誰もが自分の物語の主人公。
カメラワークが絶妙で引き込まれました。
詩的な映像が素敵でした。
肩越しであったり、ロングショットであったり、影であったりする。
ただ、これは苦肉の策でもあるんですよね。
主な対象児童の顔はばっちり映っています。
プライバシーに配慮して相当各所に許可をとりまくった上での映し方です。
非ジャーナリスティックな視点。
監督は、「後で子ども自身に振り返ってほしい映し方」「子らのお守りになるような作品にしたい」って、何かのインタビューで言ってました。
納得。
色々な制約のなかで撮られているでしょう。
構成も新鮮です。
7〜8人の子がフィーチャーされてます。
7歳女の子→中学生→高校生→19歳を追うっていうオムニバスのような流れです。
それぞれがそのパートの主人公。
別なパートでは、わき役のようにその子に関わっていたりします。
インタビューシーンも印象的。
監督が子らに施設について尋ねたら、
「ここは家とはいえない、預かってる場所」
「一緒にいる人は家族じゃなくて他人」
「血の繋がりの方が大事」
等々のニュアンスのことを皆一様に言ってました。
どの子も、施設の外に特別にいるべき場所があると考えています。
確かにそう。
ただし、親元に帰ったとしても、不安定で支えがない家庭かもしれない。
血のつながりがあるからって愛情が保証されるわけではない。
そうであるともそうでないとも言い切れないし、割りきれないモヤモヤが残ります。
いずれにせよ、オムニバスを通しで観て、人の成長に不可欠なものがあることは示唆されていたような気がしました。
施設の職員は皆さんすばらしいかったですが、あたりはずれあるんだろうなぁとか、
変な大人が職員だったら、子どもは壊れちゃうかも、なんてことも考えてしまいましたね。
自立して社会に出る際の大変さもリアルに映し出されていて、胸に迫ってきます。
フィーチャーはされなかったけれど、時々インサートされるフルートが上手くなっていく女の子とか、朝起こしに来てくれる子とか、対象の子の妹とかの物語も観たかったです。
今作は、今後も配信やソフト化がされない、TV放送されないという前提の映画です。
出演者に対するプライバシーの侵害や誹謗中傷、各家庭の詮索を防ぐため。
映画館で上映される機会があったら、またとないチャンスですので、心に留め置くべし。
2024年時点、
虐待や保護者の経済的理由など、さまざまな事情で社会的養護が利用している児が約4万人いて、
そのうち児童養護施設に在籍している児童は約2万3千人いるとのこと。