イスラエルとパレスチナの間にある現実を、様々な困難を乗り越えてこういう形で世に伝えてくれたことに対しての敬意を込めて。
内容に関しては、ただただ理不尽な現実を息を殺して見つめていた90分だった。
イスラエルのガザに対する攻撃はテレビで見ていたし、パレスチナ人が住む土地に、イスラエル政府主導でユダヤ人入植者が入り場合によっては暴力に訴えることにより元々住むパレスチナ人の生活が脅かされているといったことは、報道などから見知ってはいた。
でも、日々家を壊され、自分たちの住んでいたところが軍用地として奪われていく様が、日常生活として描かれる様はすごく生々しく辛い現実だった。
そして、家が壊されるから家財道具を運び出し、洞窟の中に居を構えたり、夜のうちにまた再建したり。自家発電し、井戸を掘ってライフラインを確保しているものの、軍は発電機を壊し井戸も埋めようとする。
抗議をすることは、自分たちの生活を守ることにつながるけれど、加減ややり方を見誤ると逮捕されたり発砲されての死にもつながる。
この不安定な毎日が日常というのはどんなにか辛いしんどいことだろうか。
このドキュメンタリーは、パレスチナ人のパーセルだけでなく、ユダヤ人のユヴァルの存在や視点が入ることで厚みを増している。
それにしても、ユダヤ人の軍関係者や入植者たちは、パレスチナ人に対して非人道的なことを行なっている現実をどう思っているのだろうか。ユダヤ人の中にも、ユヴァルのような人たちもいるわけだが、裏切り者のように扱われていないのだろうか。
ユダヤ人は、確かに長い歴史の中で迫害されていたり居場所を得られないでいたり、そして近々には、ナチスのホロコーストのような悲劇もあったわけだが、それと同じことをしているという意識はないのだろうか?
私自身は遠い日本にいて、あまりにも遠くいる小さな存在でしかないのだが、起こっていることを少しでも知り、思いを馳せること、忘れないことが第一歩なのかなと思う。
パレスチナしかり、ウクライナしかり、ミャンマーなど、世界中には胸が潰れるような理不尽に満ちている。どちらか一方だけに肩入れするのは違うと思うが、何が起きているのか、いろいろな立場から見て自分の頭で考えることは放棄せずにいたいと思う。
そして、こういう映画も少しでも多くの人に見てもらえたら良いなと思う。