シートン

フォロウィング 25周年/HDレストア版のシートンのレビュー・感想・評価

4.1
ノーランのトリックに、まず観るものが騙されている。いや、少なくとも僕は完璧に騙されていた。この映画がモノクロで、音響もシンプルであることの必然性ははっきりしている。だからスタイリッシュだ。

手持ち無沙汰、怖いもの見たさ、単なる退屈さから大いなる悪に引き込まれていく構造とは、知らないうちに組織的な現代犯罪に組み込まれていく若者(たとえばブラックバイト)の姿を予告し、さらに、陰謀論的な不透明な悪の主体さえ感じさせるところがある。この映画が新しく洗練されていると感じさせる理由である。

手持ちカメラで撮ったような映像も、観るものに移動の手触りと緊迫感を与える。そして、主人公が、二人のほかに誰とも会うことがない、ということがその閉塞感と切迫感を強調している。

しかし、それはいうまでもなく、若き日のノーランにとって、限られた予算と人員で映画を撮らなければならない、という制約からくるものであった。だが、その制約をむしろ物語を規定し、その世界を深化させる装置として必然性を付与し得たことに、この映画の凄みがある。

制作上の制限というものをむしろ武器とする。作品上の必然とする。それがこの低予算映画の卓越性なのである。
シートン

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