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幕末太陽傳のKSatのレビュー・感想・評価

幕末太陽傳(1957年製作の映画)
4.0
日本映画史の名作と呼ぶのは極端だと思うが、あらゆる落語を素に、噺に噺を重ね連ねた、贅沢すぎる人情時代劇。

何やら行く先わからぬ幕末が舞台なのに、そんな不安はどこへやら。フランキー堺は、心中騒動に駆け落ち、焼き討ち計画と、あらゆる揉め事に首を突っ込みまくるのだが、結局、その素性は分らず仕舞い。まさに、名無しの権兵衛を地で行く様が痛快だ。

チャンバラが全くないにもかかわらず、画面には動きが溢れていて、まさに活劇である。また、「賭け事はいかん」と言ったすぐ後に花札のアップになったり、「斬る!」と言った次に薪を割る場面になったりと、シーン展開すらも笑いに繋がっていて、いつまでも笑っていられる。

しかし、冒頭の現代の品川の風景やラストの墓場が見せるように、何ともいえない侘しさがあるのもこの映画の特徴である。ネットにある情報によれば、ラストシーンは本来、フランキー堺が江戸の街のセットから現代の街に飛び出すものにしたかったらしいが、こうなっていればきっと、よりとんでもない映画になっていたに違いない。
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