緋里阿純

バッドボーイズ RIDE OR DIEの緋里阿純のレビュー・感想・評価

バッドボーイズ RIDE OR DIE(2024年製作の映画)
4.0
マイク(ウィル・スミス)×マーカス(マーティン・ローレンス)による、マイアミ市警のお騒がせコンビ「バッドボーイズ」を描いたシリーズ第4弾。
前作の内容が密接に関わってくるので、前作だけでも鑑賞した上で劇場に足を運ぶことをオススメする。

『1』と『2』を監督したマイケル・ベイに変わって、前作から監督をアディル・エル・アルビ&ビラル・ファラーにバトンタッチし、久々の新作を現代的なアクション大作にアップデートして大成功を収めた。今作でもその手腕は健在で、完成度の高かった前作をも凌ぐ作品に仕上がっていると思う。また、比較的真面目なトーンだった前作に対し、今作は下ネタやFワード、ギャグも多く、『2』を彷彿とさせる部分もある。

ー以下ネタバレー

前作で退場してしまったハワード警部を、麻薬カルテルとの汚職疑惑によって物語の核に据えるというアイデアは素晴らしい。作中で亡くなってしまったキャラクターをこういった形で活躍させるのは面白いし、マイクとマーカスの知らない所で長年カルテルを追って数々の証拠を掴んでいたという展開は、実はシリーズ中1番の活躍をさせてもらっている。

活躍と言えば、マーカスの娘メーガンの夫レジーの大活躍を忘れてはならない。『2』では頼りないボーイフレンドに過ぎなかった彼が、今作では家族を守る為マーカス宅に侵入してきた武装集団15人に1人で立ち向かい、傷一つ付けられる事無く見事に全滅させる。何なら、作中1番強い人物かもしれない。カメラに向かっての海兵隊員らしい任務完了の敬礼もコミカルで、ラストもニヤリと笑う彼のアップで終わり、ハワード警部と共に非常にオイシイ役だった。

プレイボーイのマイクは、今作で遂に所帯持ちに。しかし、前作での息子との関係性から、ハワード警部の死に責任を感じてもおり、幸せを手にしつつも自分のせいでそれを失うのではないかと苦悩する。全てを乗り越えて、いつものイケイケに戻るのは彼らしい。

そんなマイクとは対照的に、今作ではマーカスがイケイケに。冒頭のマイクの結婚式中に倒れ、死の淵を彷徨った彼が、奇跡的な生還(ご丁寧にハワード警部にも会っている)からスピリチュアルに目覚め、未だかつてない全能感を胸にマイクを振り回すというのも面白かった。『2』でマイクがギャング相手に2丁拳銃を構えたように、今作ではマーカスが2丁拳銃で暴れる。これまでの“自信家のマイクに振り回される心配性のマーカス”という構図をひっくり返す面白さは、シリーズを重ねてきたからこそ。巨大白ワニに噛まれて目を覚ます様も笑えた。

前作から登場したマイクの息子アルマンドが、今作では無実の容疑を掛けられて逃亡者になるマイク達の協力者になる展開も良い。複雑な出自や育ちから道を踏み外してしまった彼が、今作では自らが殺めたハワード警部の孫を守る事で、一つの更生を果たす。殺人者なのは間違いないし、ラストでも逃亡者のままだが、この先彼がどういった道を辿るのか興味深い。

他にも、前作から登場したケリーやドーン等、今作は主人公勢の描かれ方がどれも面白い。
しかし、主人公勢がここまで魅力的に描かれていたのに対し、敵役のマクグラスについては、やや単調で魅力に欠けるキャラクターだったように思う。元諜報部員で、捕まって拷問を受けた際、苦痛から逃れる為仲間を裏切った過去を持ち、以降カルテル側の人間となる。
だが、その諜報部員という経歴や裏切りの過去も、単に「そういうキャラクターです」とお出しされただけの印象。前作ではマイクがかつて本気で愛した女性や息子、前々作ではネジの飛んだマザコン麻薬王シドがそれぞれ敵役として魅力的だった事と比較すると弱い。また、彼の部下達も記号的で「やられ役」以外の何者でもなかったように思う。

クライマックスのアクションシーンでは、王道の激しい銃撃戦や肉弾戦に混じって、FPS視点のシーンが挟まれていたのは現代的だと思った。弾切れのマーカスに銃を投げ渡したりと、アクションシーンにもバディ感が表現されているのも面白かった。

全体的には前作以上の面白さで、大ヒットを飛ばしている様子からも、監督達が構想する次回作も実現するだろう。新たな装いで復活したこのシリーズが、今後どういった展開を見せるのか楽しみだ。
緋里阿純

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