デンマーク映画の「胸騒ぎ」をブラムハウスがリメイク。胸糞映画と話題になっていて気になっていたものの、すぐにブラムハウスでリメイクが決まり、その監督を務めるのが胸糞映画の最高峰「バイオレンス・レイク」を撮ったジェームズ・ワトキンスに決まったことで敢えてオリジナルを鑑賞せずに挑戦。
胸糞悪さはハリウッドらしく抑えめではありつつも、バイオレンス・レイクで見せたあの不愉快さを特に前半部で丹念に描いていてとても素晴らしかった。劇伴全くなしの前半は最高。ホラー映画は良くないことが起きる、もしくはこいつはヤバい人だっていうのが分かっている状態で見にいくので、それが起きるまでをどう見せるかという所が肝になるのだが、マカヴォイの演技も相まって非常にクオリティが高かった。
いわゆるホラー的な猟奇っぽさとは異なる、ごくありふれていて異常であるのか価値観の違いであるのかの境目を上手く描いているのが良かった。2つの家族は田舎と都会に象徴されるように価値観がまるで異なる。エシカルな考えに対する態度とか、子どもの教育の仕方とかも実際に存在するので、不快を感じても「生きている世界が違う」だけなので強く糾弾はできない。ただ不快だからってさっさと距離を置くということも、相手が尊重している態度だとかえってこっちが悪者になってできない。
不快であることは明白ではありつつも、その状況を受け入れるしか無い。そしてさよならをするまでは交流が続く。誰しもが経験した・経験するであろうこの相手に縛られるのではなく(ある種縛られているとも言えるが)、自分や公平な状況に縛られることでの不快さがとてつもなく良かった。結局ホラーはそこ。現実に体験する恐怖感と重ね合わせないと本当の怖さは生まれない。そこをちゃんと描いている。
またそこから直接的に縛られていく方向へ、ホラーらしく変容していくところもエンタメとしても良くできていた。時折見せる異常性も最低限に抑えていることで、あとからあれはかなり異常だったというところも見つかり面白い。
ジェームズマカヴォイの農業ではそうは鍛えられないキン肉マンっぷりや目つきの鋭さからくる歪で威圧的なビジュアルも良かった。ホラー的なビジュアルじゃないんだけど普通に威圧的。丁度いい。
これは久しぶりに不快で快感を得られる最高の体験だった。オリジナル版も見よう。