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ゴスフォード・パークのpikaのレビュー・感想・評価

ゴスフォード・パーク(2001年製作の映画)
5.0
アルトマン最高!笑えて泣けた。推理物映画としても傑作だけどそれだけに留まらず階級社会を皮肉ったり建前の裏っ側にある人間模様から様々なものを炙り出したり、見るたびに多様な魅力が楽しめそうな傑作!
貴族の使用人たちにスポットを当てるってのは階級社会に対する皮肉を描きやすいところだけど、使用人の中でも階級があったり主人たちにも影響を及ぼしあったりと、階級格差の人間関係を娯楽にしてしまうとは面白いし見応えハンパない。
限られた空間の中での多人数の群像劇ってことでアルトマンの演出捌きをたっぷり堪能しつつ、同様の構成だがイマイチ楽しめなかった「ウエディング」での鬱憤も晴れて大満足。
初めてだと迷うような空間で似たように着飾る貴族と同じ格好の使用人たち、だなんて誰が誰やら混乱してしまって退屈になりそうなもんだが、画面狭しと動き回りガンガン会話を繰り広げカメラもカットもリズミカルに流動していて全く飽きない。
主役不在ではなく全員が主役足り得るキャラクターの奥行きと個々のドラマが素晴らしく、主役級の名優勢揃いってことだけでなく全員にスポットが当たっている演出が良い。アルトマンが人間を描くには群像劇という手法が必要なんだっつー、これまで積み重ねてきた意図が格別に発揮された質の高さと完成度。後期代表作と聞いて納得の存在感。
殺人事件というドラマの軸がありつつも魅力は枝葉の部分ってところが「ロンググッドバイ」を彷彿とする。インタビューで「撮影に入ると脚本は読まない。役者のミスを待つ」「観客が語る良かった部分ってのは脚本に書かれていないところばかり」って言ってたまさにそれで、ミスを待つというよりは誘発したアルトマンの思惑通りと言うべき面白さがバランス良くドラマに組み込まれていてめちゃくちゃ楽しい。
エンディングの味わいがまた最高で、後半からのジャンルドラマのまとめと共に序盤で見せたアイロニカルな人間ドラマもブレずに盛り込んで締めてしまうところが鮮やか。最高すぎ。
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