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ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズのbluetokyoのレビュー・感想・評価

3.6
冒頭、宮崎の海岸で観光する、というかだべっている、主人公のちさと、まひろの体つきのなんともいえない弛緩した、精悍さのかけらもない感じが印象的だ。俗にいうだらしない体というか。対照的に、冬村かえでの肉体は、まさに野獣のような精悍さである。その肉体を衣服の前をはだけさせて、これ見よがしに見せ付けている(というシーンは一瞬だが)。この両者、つまり、ちさと+まひろと冬村かえでが激突したら、どちらが勝つのか。その機会は、早々に訪れる。

話的にも、ここで映画が終わるわけにはいかないので、冬村かえでが勝つのである。しかも、まひろに、血ー、出てるよ、とか言いながら、ハンカチを手渡す。まひろは、このハンカチを、完全に勘違いする。おまえは、プロ失格だ、出直してこい、みたいに言われたと思ってしまうのだ。

冬村かえでの住んでいる家で待ち伏せするわけだが、まひろは、冬村がトレーニングするために使っているサンドバッグを自分も使ったりして、プロ中のプロとして、冬村をリスペクトし、同化しようとさえ思う。

最後に、再び、まひろと冬村かえでは戦うことになるが、まひろが勝利する。このとき、まひろは、冬村にもらったハンカチを返すが、冬村は、まったく受け取らなかった。まひろは、おそらく、ハンカチの意味に気付いたのだろう。だから冬村かえでを射殺したのだ。

冬村がまひろにハンカチを渡したのは、オレのようになるなよ、という意味で渡したのだ。そもそも、ハンカチは、冬村の私物ではない。
それに、冬村が負けたのは、視界に、倒れているちさとの姿は入ったからだろうと思う。
冬村のまひろに向けての最後の言葉が、仲間がいて羨ましい、だっけ、というものだったからだ。

で、このハンカチはいったいなにか、である。ハンカチは、冒頭、男の子が、冬村に渡したものだ。その男の子は、なぜか、最後にも登場する。
仕事打ち上げの焼肉居酒屋の呑み会のとき。玄関あたりにちょこっと出てきていなくなる。
これは、冬村の殺し屋になる前の自分自身だったのでは、と思ってしまう。

仕事は、生活のため(生活の糧を得るため)の手段に過ぎない。ただ、手段が目的化してしまうこともある。プロ中のプロは、まさに、仕事が目的化したということでもある。
冬村は、仕事が目的化してしまった姿の成れの果てなのだ。まひろに、自分のようになるな、と言ったわけだ。(自分と同じ匂いを感じたのだろうか)

昔の作品だと、むしろ、冬村のような一匹狼(と言いつつ次々と仲間が増えていくのだが)が主人公になるのだけど、いまは、チームプレーが主人公になるんだな。
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