Supernova

ステレオ/均衡の遺失のSupernovaのレビュー・感想・評価

ステレオ/均衡の遺失(1969年製作の映画)
4.1
初クローネンバーグがこれになると思わなかった。というより彼の作品は見たことがあるんだけどどれを見たのかが思い出せなくて記録できていない。

テレパシーの実験をナレーションと映像に載せて描くエセ学術的SF作品。何言ってんのかわからないと思うけど自分もどう説明すればいいか悩みあぐねた末にこう表現するに至ったから許して。

天才。登場人物のセリフはなしに、ナレーションのみで進行するんだけど、ものすごく超現実的な概念を理論的に取り扱っていて面白い。
言葉選びに強い知性を感じるとともにわかりやすさも両立しているから妙に引き込まれる。

それでいて描き出される映像は、文語的なナレーションに反して生々しさがあり無機質さも兼ね備えている。コンクリートばりの冷たく無機物的な印象を与えるモダニズム建築で交わされる性的で動物的な密着に神秘性を感じずにいられない。静謐の中に存在するエロチシズムが神秘性を極限まで高めている。
論文の読み上げのようなナレーションに合わせる映像なんて想像もつかないと思うけど、観ると不思議としっくり来る。

音楽がかなり良い。また、それとは関係なく時折鳴り渡る重低音のノイズが作品の独特なインダストリアルな雰囲気の演出に貢献している。モダニズム建築と相性がいい。

アヴァンギャルドな作品でエンタメ的要素は皆無だけど、構図やセリフ、カメラワークなど全てに意図を感じるので不思議と退屈する時間はなかった。処女作からこの世界観をこのクオリティで描けるのは天才だと思う。
Supernova

Supernova