フランスの作曲家モーリス・ラヴェルによる不朽の名曲「ボレロ」の誕生秘話を描いた音楽映画。
深刻なスランプに苦しめられている作曲家ラヴェルのもとに、ダンサーのイダからバレエの音楽の依頼が舞い込む。一音も書くことができないラヴェルは、失ったひらめきを求め、苦い思い出とともに過ぎ去った自らの人生を振り返っていくのだったが……。
ラヴェルの生涯は母、ダンサー、愛人(ミューズ)、家政婦と様々な女性たちによって取り巻かれる。けれど性の部分はとても希薄で倒錯的にも思える。往々にして芸術家に見られる苦悩の因子として映る。裏を返せば原動力だし、一流を生み出すには必要だとすればやはり複雑だったなぁ。
最も目を惹かれたのは登場人物が纏う1920年代の衣裳たち。ラヴェルが着こなすスーツやシャツ、ネクタイのディテールは勿論、ミシアの洋服に至ってはため息が出るほどお洒落で素敵。気品が漂う。
そしてサテンの手袋がなんとも官能的。
ミシアとのツーショットシーンのカメラワークがエロティックで美しい。気持ちを押し殺したラヴェルの男心のようで切なくもある。
生みの苦しみの中で、音が曲へ結実する過程はゾクゾクした。あの反復するリズムの断片が顔を出す瞬間、瞬間…。とりわけ家政婦と一緒に歌う「バレンシア」の伴奏シーンは印象的だった。
時間軸を移動させたり断片的な語り口が、個人的には感情移入の妨げになってしまったものの、ラヴェルの悲壮感や冷たさすら蓄えたルックスと表情、神経質でどこか掴みどころのない人物像から生まれた「ボレロ」。
曲自体に妖艶さエロティックさを感じる域には達しなかったものの、
優雅で芳醇、ラストは圧巻!トリハダ!
まさに“永遠の旋律”に酔いしれる至福の時間だった。
15分ごとに世界のどこかで誰かが
ラヴェルの「ボレロ」を演奏している
あの旋律、脳内再生は年を持ち越しそう🎶