19世紀後半のイギリス統治下にあったインドを舞台に、ヒンドゥー教の一宗派であるヴィシュヌ派の指導者JJによる女性信者への性的搾取と、それを新聞で報じた記者カルサンダースに対するJJからの名誉棄損の訴えにより起こった訴訟を描いた作品。
新聞記者を演じるのは「きっと、うまくいく」や「PK」で知られるアーミル・カーンの息子ジュナイド・カーンで、これがデビュー作となる。時代的には「RRR」と同じ時期の話で、事の発端が女性の人権問題にある点も同じ。本作は実話ベースであり、19世紀のインドで、既に宗教指導者に対する告発が行われ、訴訟に発展していた事実にも驚いてしまう。
実話ベースでありながら、150年以上前の話という事で、細かい部分はディフォルメして描いているように感じるが、良い意味で映画らしく、ぐいぐい引き込まれる。ミュージカル・パートもあり、インド映画特有の魅力に溢れている。
しかし、本作に対しても、インド国内では150年前と同じように宗教関係者側から配信差し止めの動きがあったというのだから、問題の根は深い。最終的にはインドの高等裁判所が配信にゴーサインを出し、Netflixで即日配信が行われる事になった。それを早くも日本で観られるとは何とも素晴らしい話である。
日本でも権力者による性加害問題や、宗教と政治の癒着問題が取り沙汰されている。近年の人権関連の重要作同様にジャーナリストを主人公に据えて描かれている点も含め、観るべき点が多い。