キィィィィリィィィィィィィィ!!
はなれ山を巡る、ドワーフ、エルフ、人間、オーク、そしてサウロン。
それぞれの思惑が交錯し、決戦の火蓋が切って落とされる最終章『ホビット 決戦のゆくえ』。
その壮大な決着の中を1人のホビットが奔走する。
彼は彼で指輪に魅入られ始めるが、その力を借りながら、大切な友を、共に旅をし命を共有し合った親友達を思い、彼なりに戦いに挑む。
前作が湖の街に竜が襲来するところで終わるので、本作は冒頭からクライマックス。
小さな街でちっぽけで無力な人間達が竜の炎に巻かれながら小さくても強き抵抗から始まる。
いきなり息を飲む。世界観に飲まれる。
街が悲惨なことになってる一方で、やっと故郷に辿り着いたドワーフたち。
ドワーフの王、オーケンシールドは早速、ドワーフ一族が代々守り続けた宝に心を侵される。
そんな中、その宝を狙う者達が続々と向かってくる。
心を侵され、忠誠も散り散りになりかけているドワーフ達。
それを何とかしようとするホビット、ビルボバギンズ。
1作目、2作目では彼は旅の初心者であり、危険にも慣れてないのでどこか及び腰で、仲間のドワーフ達でさえ戦力として数えていない感じであったが、この3作目にしてそこから脱却する。
持てる知恵を使い、一緒に旅をしてきて目的の達成と平和が目の前の彼らのために、とにかくどうすべきか考え、行動する。
そして、ちっぽけな、たった1人のホビットが周りの心と体を動かす。
あれだけ排他的で上から目線のエルフも、頑固で意固地なドワーフも、必死に生きようとする人間も、小回りが効くというだけでビルボを連れてきた灰色の魔法使いでさえも、ホビットを信じ、共に戦う。
『ロードオブザリング』シリーズとはまた違う、種族規模での目的の共有と闇の力への抵抗に力を貸す1人のホビットの壮大な旅がここにある。
そんな大それたことになるとはつゆも知らなかった彼が、旅を経て、本当に大きくなって、歴史の1ページに名を馳せるような存在になる。
彼の勇気があってこその物語。
そして、本家『ロードオブ〜』ではあまり観れなかったことも観れる。
例えば、白の魔法使いサルマンの力。
灰色の魔法使いガンダルフが信頼する先輩サルマン。
本家シリーズではまさかの心変わりをするサルマンがここでは一肌脱ぐ。
「森の奥方、助太刀が必要かな?」とか言って、闇の冥王たちに一矢報いる。
とんでもない動きと強さ。圧倒的。
今までの“魔法使い”のレベルを超える強さとカッコ良さ。
本気で戦う魔法使いのおじいさん、ハンパない。
ドワーフのイケメンキーリとエルフとの愛があったり、ドワーフの屈強な闘志と絆と過去の因縁があったり、エルフとの絶妙な間柄があったり、レゴラスの華麗な弓捌きだったり、人間の雑草魂があったり。
とにかく見所が絶えない彼の壮大な旅の物語、ここに終結。
あの頼りないホビットが最後は皆と肩を並べて結末を共有する姿が何とも印象的。