このレビューはネタバレを含みます
粗さはあるものの、スリリングな展開と体当たりの演技に引き込まれ、込められたメッセージに心打たれた2時間だった。
報道、SNS、警察… そういったフィルターや属性を介して人を見るよりも、実際にその人と会って、接して、感じ取るもののほうが大切である、ということ。
正しい人が救われる世の中であってほしい、という希望。
そこに共感した。
なぜなら、現実はそう上手くはいかないから。
正しい人が報われない世の中だから。
この映画自体が「そういう世の中であってほしい」という、ある意味ファンタジーだと思う。
先日観た『八犬伝』の「虚」のパート(小説の中)のようなもの。
だから、おかしなところもあったけどまあいいかな、と。
気になった点はというと、凶器の鎌には鏑木の指紋はもちろんあっただろうけど、真犯人の指紋も当然残ってたはずだし、あれだけ現場が血まみれだったんだから犯人の足跡もあっただろう。鏑木以外に犯人らしき人物がいた証拠が何もない、なんてわけがない。
ちなみに、ああいう状況で素人が被害者の身体から刃物を抜いてはいけない。止血栓の役割を果たしていた刃物が除去されることにより、大出血して死亡するおそれがある。刃物が刺さったまま救急車を呼ぶのが賢明。
あと、高校生の鏑木が、いくら悲鳴が聞こえたからといって他人の家に入って行った時点で不法侵入だし、刃物持って警察に立ち向かうとか、自分の不利になる行動をわざわざとっちゃうのも何だかなぁ。
たまたまハンバーグの材料が全部あるとか、みんな次々と味方になってくれるとか、再審や無罪判決のくだりがやけにスムーズだとか、都合良すぎるところは確かにあった。
それを差し引いても観てよかったと思える映画だった。
ダークな映画を見慣れているので、最後はけっきょく死刑になるんじゃないか、とか、実は本当に殺人犯だったんじゃないか、とか思ってドキドキしたけど、、
そんなどんでん返しはありませんでした。