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CURE キュアのKaitoのレビュー・感想・評価

CURE キュア(1997年製作の映画)
4.0
U-NEXTにて見放題作品として配信されていたため、鑑賞。黒沢清監督作品第4弾。胸部をX字型に切り裂かれるという事件が複数発生し刑事の高部(演:役所広司)はその事件について調べていた。当初はその複数の事件の関わりは見出せず困惑していたのだが、事件に関わっているのではないかとして間宮(演:萩原聖人)という男が浮上する。高部は事件について調べていくのだが、だんだん彼自身にも異変が現れ…という話。4作目にしてとても完成度の高い作品に出会えた。黒沢清監督が人間の内面、とりわけ精神について映画で表現した作品。一般的にX型というのは封印を表す。しかしながらこの作品ではこの行為は癒し(=CURE)なのである。X型をつけて殺害することは救いなのである。Xをつけて精神を解放させる。もうこれだけでも理解するのは難しい。表現が抽象的すぎるので、なかなか理解できない。間宮はこの精神の解放の伝道師の後継者を探しており、最終的には高部が継承していると考えられる。また間宮はちゃんとコミュニケーションが取れていないような様子であったがあれはおそらくそういうふうにわざとやっているのだろうと考えるのが最も納得がいく。あのように何回も間宮と会話をすることそれ自体が間宮の催眠のかけかたなのかもしれない。間宮は自分の中にあったものは今は全部外にあるので、中にあるものが全て見えると話していた。こうなることにより楽になれたから君たちもそうするべきだとして伝道している。しかし、高部は他の人とは違った。それは精神が不安定な妻がいるということ。最終的に高部自身の内面、精神にも変化が発生する。これを踏まえるとXそれ自体が精神であり、それを知覚し、解放すること(外に出す)がCURE、癒しなのである。少し前にみたクローネンバーグ監督のスキャナーズという作品を思い出したし近しいものがあるような気がした。スキャナーズにおけるスキャンという行為は対象の精神に作用して対象に変化を起こさせるといったものだったが、これはCUREにおいての催眠と近いものがあると感じる。映画の鑑賞という点どうしが繋がって線になる瞬間は今まで映画を鑑賞していてよかったなと身に染みて感じられる瞬間である。
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