Rin

ブルータリストのRinのネタバレレビュー・内容・結末

ブルータリスト(2024年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

その男が建てたのは巨大な墓──彼は、自分の、自分と妻の、自民族の、巨大な墓を建設しようとしていたに違いない。故郷の地を捨ててたどり着いた先でも居場所がなかった自分たちの存在証明が彼の人生の目的だったように思うから。人間の存在証明のための建造物は、すなわち墓だ。ところが、その墓に最初に眠ることになった人物はもしかするとあいつなのかもしれない。映画はその可能性を示して終わる。存在証明さえ、死後の居場所さえ手にすることはできない。ユダヤ人の安住の地がまだこの世に存在していないことと同期する終幕だ。

本作はカメラが優れた語り手になってくれるタイプの映画で、観ていて映画的な快感がある。水平方向、垂直方向、そしてエンドロールにも見られる斜めの方向。カメラがどの方向を切り取るか注目すると面白いだろう(このあたりは2回目観たらもう少し理解が深まる気がするな)。まさに建築的な骨格を持つ映画だ。ところで、彼の言う通り、上を見上げるのは本当に希望が見えるからだろうか。ラースローが自由の女神を見上げる時、洗面台の下に隠した注射器を取り出す時、エリジェーベトが歩行器を倒されて引きずられゆく時、そこには希望があっただろうか。確かに希望とも言えるのかもしれないが、そこにあるのは広々とした可能性を湛える希望ではなく、否応なく直面させられた逃げ場のない状況で微かな可能性に一縷の望みを託すような、そんな希望なのだと思う。ほとんど神頼みと言って良い希望だ。だからラースローは礼拝堂の天窓を高く設計したのだ。

序曲から始まった時点でだいぶ満足できるよね。
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