このレビューはネタバレを含みます
前半、「迫害され、逃げた先で従兄弟の妻に嵌められて追い出されたけど、チートな建築才能(キャリア)でなんとかなりました」みたいなラノベ展開っぽかった。
悲惨さは匂わせる程度にありつつ、説明的なくどさがなく、映像が見せるので、長尺でも全然見れる。
父親へのサプライズが失敗したから、完成したリフォームの費用を払わないと言ったバカ息子、お前は許さない。
後半、工事が進み、完成してバンバン建築家として名を馳せるのかと思ったら、そうではなかった。
こっから苦難の展開。全然完成しない。
でもカメラワークのせいか、飽きない。
無口な女の子にそっけなくされたから、「彼女は空気を悪くする、なんとか言ってくれ」と言ってきたバカ息子、お前だけは許さない。
普段車椅子の女性を廊下に引き摺り出すバカ息子、お前は本当に許さない。
ヴァン・ビューレンはラースローと二回目の対面で「なぜ言ってくれないのか」とよく言っていた。
パーティーで話した時、「なんて詩的な表現だ。君の話は知的だ」みたいなことも言っていた。
英語を上手く話せないラースローを不勉強だとからかうシーンもある。
「主張しろ、才能を使え」とアメリカ人(を体現するような男)は言う。
対してラースローは徹底して言い訳や主張をしない。
建築に対するこだわりは強いのに、自分の人生に対してはあっさり引いてしまう。
無骨で飾らない、タイトル通りの生き方と言えなくもないが、それで自分や家族を苦しめる。
英語母国語のアメリカ人の「英語もまともに話せないのか」的な圧は共感できるけども。
結局妻のエルジェーベトが一番対外コミュニケーションも自己主張も上手くて、ヴァン・ビューレンとラースローはディスコミュニケーションの面が大きかったように思えなくも無い。
ブルータリズムに魅入られて、美の核芯に辿り着いた男と、迷い込んだ男、という結末に見えた。