11人いる!
そう書きたいからというだけの無意味な書き出しから始めるのですが、本作よかったです。
予告は何度か見たのだけれど、熊切和嘉監督ということだけ記憶に残ってて、「日向坂46 四期生」というのはすっかり忘れてました。「若いアイドルがたくさん出てる」くらいの情報に変換されてたわけ。
もっとも結局のところ、実は誰ひとり知らない人だったので、同じなんですが。
フィルマのレビューを拝見すると、結構賛否が分かれてて、傾向としてはファン(「おひさま」って言うんですね。憶えときます)が高評価、それ以外が低評価かな。
私は上に書いたように、完全に門外漢なんですけど、「賛」に一票を投じます!
最初は、これも一定数書いてらっしゃるように、予告のミスリードでパラレルワールドものかと思い、興味を惹かれたんです。まあ、予告を2,3度見るとそうじゃなくって、ただバラバラにはぐれちゃったシチュエーションだとわかるんですが、それでも何となく「これは当たりの青春映画じゃないか」と直感したので昨日観てきました。
いやあ、予感は的中。
アイドル映画として大正義ですよ。
アイドル映画というのは、アイドルを等身大の女の子として、キラキラ輝いて描いてみせ、その時代の空気の中に永遠に記録する、というのが使命な訳でしょ。本作はそれに大成功している。
しかも、知世だ、ひろ子だ、って(譬えが古いよなぁ))一人のアイドルを輝かせるどころじゃない。
11人いる! 11人もいる!
どうまとめるんだ?! って話ですよ。
ドラマなら毎回別の子に焦点を当てて十分に描けるけど、これは映画。
しかも本作の87分という驚きの短尺は敢えてのことだと思います。
映画なんだから2時間くらいまではいいんですよ。でも、そこからなんと25パーセント以上も短い。
だから本作は、大量のアイドルたちの大量のエピソードを敢えて点描画にすることで、最大限の効果を上げようと企図された物語なんだと解釈しました。
で、その試みがきっちり成功してる。
誰一人顔を知らなかった私は、最初、「ヤバ! こんなにいるの?!(全員じゃなく、あの班の子たちだけで既にね)」と焦った。見分けがつかない!
したら、別行動になって、さらにたくさんの子たちが登場するんですよ。ヤバい、わからんくなる!
でもね。
キャラクタだったりエピソードだったりの輪郭がはっきりしているんで、全然混乱しないんです。
気がつけば、ストーリーの中に自然に入っていけてた。
これは本作が優れているからじゃないですか?
笑いの要素が多く入っているところも良かった。
「パラレルワールド」のところは、大喜利大会になってましたね。あそこからいきなり面白い。
「今際の国のアリス」言及がいちばん笑った。余談だけど、JR渋谷駅のあそこのトイレ入ると、いつも「アリス」を思い出しちゃう。今って、工事してて導線変わってるんだっけ。
「池袋はほぼほぼ埼玉」も笑えた。
「くさい」を結構引っ張るのはちょっとどうかと思ったけど、まあ目くじらを立てるほどじゃない。
それよりも、予告でいちばん気になってたのは、ある台詞。
本作を直感的に良作だと感じた予告だったけど、あの鼻持ちならない選民思想な台詞はどういう文脈で出てくるのか、と思ってました。「こっち側に来る人だと思う」ってやつね。
いやいや。杞憂でしたね。
なるほど。あれはあのアイドルさん(多分、日向坂の先輩メンバーさん? おれ、この映画観る資格あるのかってレベルで知識が欠如してるな……)が、「私もかつては引っ込み思案だったんだよ。でもあなただってきっと一歩踏み出せるよ」と背中を押してあげるために言ってたんだな。いいじゃないですか。
点描にしたからこそ、省略された部分も含めて、ストーリーの密度は高くなってる。
最大の省略は、ラストの卒業式に至るまでの空白ね。
「あ、ほんとにあの子(ごめんなさい。名前が……)アイドルになれたんだ」とちょっとウルウルしましたです。
それをまず「アクスタ買っちゃった」みたいな間接話法で伝える技法も素晴らしい(「アクスタ」の意味がわからなかったけど、すぐ「アクリルスタンド」だってことも理解できましたよ!)。
まあ、本作最大の疑問点は、朝から17時過ぎまでに、あの距離を移動できるのか(さらにその後お台場まで移動してるけど、日がまだ高いよね)、ってことですが、それを言っちゃあ野暮。なにしろタイトルが「ゼンブ・オブ・トーキョー」だしね。全部行けたんだよ!
ああ、このタイトルもセンスがいい。「オール・オブ・トーキョー」だったらダサダサだし、「東京のすべて」だったら集客できなさそうだし、見事だなあ。
ところで今日は、シーバンスのア・モールで昼ご飯を食べてきました。
そんでもって、本作の聖地、オーディション会場を巡礼してきました。
ア・モールって、会社からすぐなんで、しょっちゅうランチに行くところなんです。
本作観てたら「A MALL」って建物が映る。「あれ?」と思ったんだけど、全然見たことがない場所。
「同じ名前の建物がほかにもあるのかな」と思ってたら、建物のディレクトリが映って、そこにやっぱり私が知ってるア・モールに入ってるテナント名がずらずら書かれてる。しかもアーチ状の屋根も同じ。
映画観終わって調べたら、建物の反対側の入り口だと判りました。
いっつも陸側から行ってるから知らなかったのですよ。
なもんで、今日はア・モール2階の「マンディール」でAランチ食べて、いつもの反対側からドア開けて階段降りたら、なんとそれが「オーディション、間に合わなかった」ってあの子がしょんぼり降りてきた階段でした。
(あかん。なんぼ何でもずっと「あの子」で通すのは失礼すぎる。今、調べました。役名が桐井智紗で、演じるのは渡辺莉奈さんです)
建物の向かいにある、あの神殿風の建造物は「水のラビリンス」っていうんですね。お洒落な場所じゃないですか。
映画ではあの広場はかなり広く見えたけど、実際行ってみたら意外と狭かったんで驚きました。やっぱ撮り方ってあるんだな。
本作に登場する場所はことごとく「ザ・東京」なんで、ロケ地特定はかなりしやすいんだけど、多分このア・モールだけは知ってないとたどり着けないと思います。
なので、今回はロケ地巡りしたいおひさま(←憶えたて)の皆さまのために情報をお伝えしてみました!
あれは港区芝浦にある「シーバンス ア・モール」です。
最寄り駅は浜松町か大門ですよ!