ニクガタナ

名もなき者/A COMPLETE UNKNOWNのニクガタナのネタバレレビュー・内容・結末

名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN(2024年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

私はボブ・ディランのことをほぼ知らん
61年から65年までの出来事。うーん、ちょっとノリきらん。理由は明確、波乱が足りん。アーティスト伝記モノに期待してるのは自身には味わえない波乱万丈の人生。波風立たないとつまらんよなぁと思う気持ちがあり、麻薬に手を出すんじゃないか、乗り回すバイクで事故に遭うんじゃないかといらん心配をたくさんしたが杞憂に終わる。本作は生い立ちや家族を描かない構成で、天才のお仕事青春ものの風情。ボブ・ディラン多少コミュ障なきらいもあるし、スターとしての孤独や葛藤も描かれるが概ね順風満帆。終始物憂げな表情でタバコを吸い、色気振り撒くティモシー・シャラめー!19歳にして大して苦労もせずに売れて、女性にもモテて、こんなにもいい曲ばかり書いて、嫉妬されて当然。描かれる波乱はフォークフェスでロックを演奏しちゃうくらいで波乱ネタとして大変弱い。恩師ピート・シーガーがどこまでも良い人でそれを演じるのがこれまで曲者ばかり演じてきたエドワート・ノートンというのがまたグッとくる。枯れて柔らかい印象で、最初誰か分からなかったくらい。なりきり具合がやっぱり上手い。ピートの妻トシ役の初音映莉子も良い。彼女シルヴィを演じる推しのエル・ファニングには幸せになって欲しいんだが、本作もボブに振り回されて気の毒。他にも良いキャラがいっぱいいて楽しめた。歌唱シーン山盛りの中、1番のお気に入りは終盤「君が探し求めてるのは俺じゃない」と歌う「It Ain’t Me, Babe」元カノ歌手 ジョーン・バエズの大変ナイスな選曲で大迫力のデュエット。ステージ上でのイチャイチャ模様を見させられエルたん脱走。不憫。不覚にも「Like a Rolling Stone」の歌唱シーンにちょっと涙した。
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