このレビューはネタバレを含みます
「関係あるかもしれないし、ないかもしれない」
兎にも角にも、手がかりなのかもしれないしそうじゃないかもしれないような小道具や設定など盛りだくさんで、2人の主人公を中心に話は進むが、別軸で進んでいるストーリーもあって、その上映画も終盤にさしかかる頃に裏切られたように登場人物たちの名前と境遇が変わるなど、映画の構成は極めて難解だ。
そのために、この映画には多様な見解が存在するわけで、私の解釈も監督の意図と合っているかもしれないしそうでないかもしれない。深い沼にハマっていくようにこの映画に魅了される理由はそこにある。
映画は、前半と後半に分かれているように思える。
そして、後半のナオミ・ワッツ演じるダイアン・セルウィンの希求した、完璧な世界を夢みた内容が、前半パートだと思った。
ハリウッドスターになるという夢を抱いてカナダのオンタリオからやってきたベティ(ダイアン・セルウィン)。胸に期待を膨らませ、キラキラした眼差しの彼女は、かつてダイアンも同じ期待と眼差しを持ってハリウッドに来たのだろうと思わせられる。
そして、恋人であったリタ(カミーラ・ローズ)。出会った時には記憶喪失状態であり、頼るべき人はベティしかいない。
オーディションでは、類稀なる才能を発揮し、彼女の演技にその場にいた人々は息を呑む。
どこかのインタビューで、「ドーナツに注意を向けろ、穴とかそういう他のことは関係ないんだ」と監督が語っていた。
複雑難解なプロットではあるが、この映画のドーナツと言える部分は、ハリウッドに潜む深い闇であり、それによって夢破れたハリウッド女優の悲劇であり、そして切ないラブストーリーでもあるのかなと思った。