(試写会で見させてもらったので、満点にします)
とにかくバンドメンバー5人(後期はドラマーをクビにして4人)の見ためが最高で(ルッキズム)、K-POPファンみたいに言うならビジュ天才である。写真がかっこよすぎるのだ。映像のフッテージもたくさんあるけれど、写真が圧倒的にキマっている。なんか、ニック・ケイヴの歌詞もあいまって、ヴィジュアル系みたいだった。
恥ずかしながら、ザ・バースデイ・パーティのことはほとんど知らなかったし、ニック・ケイヴ&ザ・バッド・シーズだって、『From Her to Eternity』を「80年代ロックの名盤」くらいの認識で知っていたくらい。2013年の『Push the Sky Away』と2016年の『Skeleton Tree』から「今のニック・ケイヴ&ザ・バッド・シーズはすごい」というムードになって、ちゃんと聞くようになった感じ。私のニック・ケイヴ歴は浅い。
そんな感じなので、この映画をめちゃくちゃ新鮮に見た。まあ、とにかく、ひどいバンドである。パンクど真ん中であり、なおかつニューウェーブ/ポストパンクの時代に突入していく過渡期に活動していたとはいえ、かなりめちゃくちゃなことをやっている。型通りの言葉を使えば、破滅的。よくこれでバンドの活動が数年もったものである。
ザ・バースデイ・パーティは笑えるバンドだ。このドキュメンタリーでもけっこう笑えるポイントが多くて、なんでそんなことやるの? 馬鹿なの? みたいな、おかしなところがたくさんある。それだけ、やりたい放題だったのだ。まあ、そういうのは、今はラッパーがやっているのだろう。
時代性や歴史性がわかりづらかったり、周囲のバンドやシーンとの関係がわかりづらかったり(私が大好きなザ・フォールにめちゃくちゃ似てるじゃん! って思ってたら、案の定でてきた)、編集や映像がうるさかったり、アニメーションが多用されていたりと、気になるところはいろいろとある。でも、とてもおもしろい映画だった。
ベニューでの演奏の録音をバキバキにコンプで押しつぶして、低音を持ちあげたような粗くてひどい音を大音量で浴びていると、ライブハウスにいるような気分になった。「狭くて小さなライブハウスがパンパンになっていて、もみくちゃになりながら、強い熱気を感じつつバンドを見ている、聴いている」という体験が、この映画にあった。なので、ニック・ケイヴのことなんてよく知らないひとにもおすすめです。