妻の誘拐と見せかけて、義父から身代金を騙し取ろうと「偽装誘拐」を企むちょっと冴えない夫の物語。
最初からトラブルフラグが立ちまくっており、わくわく笑。
案の定、アクシデント連発でおもしろい。
誘拐犯のコンビは、おしゃべりで変な顔の男(スティーブ・ブシェミ)と、無口で整った顔の男(ピーター・ストーメア)。
この二人は殺人に対するハードルが低くて、結構すぐ殺しちゃう。
お前たち、本当に「偽装誘拐」のつもりでやってるのか笑?
なんかサスペンスなんだけど笑っちゃうんだよなー。
あと母親が誘拐されて「お母さんが心配だ」と嘆いている息子の部屋に、“アコーディオンキング”というバカみたいなポスターが貼ってあって笑った。笑顔のおじさんがアコーディオン弾いてるポスター。なんだあれ。
こっちは真剣に心配してるんだから、もっと普通のポスター貼ってくれよ笑。
ということで、結構サスペンス色の強いストーリーなんだけど、それを一段高い場所からマリオネットを操るようにコーエン兄弟が「これは喜劇なんだよ」とフザけて茶化してる感じが見えて、なんとも不思議な感覚の映画だった。
妊娠中の女性刑事(フランシス・マクドーマンド)の飄々とした雰囲気もいい。
木材粉砕装置から片足だけ出てるのギューギュー押し込んだりとかも、きっとブラックユーモアなんだろう。
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ところで、「この物語は実話である」ということで、どんな事件だったんだろと調べてみたら、なんとフィクションだった!
「この物語は実話である」というテロップの演出ということだ。
そんなのありか笑!?
いやいや、エンドロールにちゃんとフィクションだと書いてあるんだよ、というので見返してみたら、
The persons and events portrayed in this production are fictitious.
(この作品に描かれている人物や出来事は架空のものです。)
だって。
だったらこれも日本語字幕で出さなきゃダメじゃない?こんなの日本人には気付かんよ。
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静かな雪景色の中の騒がしい事件。
雪の白と血飛沫の赤。
温かい家族と不幸せな家族。
実話とフィクションの交錯というメタ視点。
悲劇的な喜劇。
様々なコントラストが映える不思議な世界観の傑作。