スガシュウヘイ

レクイエム・フォー・ドリームのスガシュウヘイのレビュー・感想・評価

4.0
この上なく悲劇的な物語。
心が絞られる、凶々しい鬱映画。
なのに映像はスタイリッシュで洗練されている。
この違和感に酔いそうになる。


まず、音楽がいい。
弦楽器のつんざくようなメロディが、人生の崩壊をよく表現している。
タイトルの『レクイエム・フォー・ドリーム』は意訳すれば、「崩れ去った夢のための音楽」みたいなことだと思うので、このメロディなくして、本作の完成度はあり得なかったと思う。



次になんといっても、映像!

刹那の映像と映像、音と音を組み合わせ、最後に瞳孔がバッと開く。
この映像が何度も執拗に出てくる。

そのうちに私も、一種の<中毒>に陥ったような気分になる。


すると、今度は母親がダイエットサプリメントを飲むシーンでも、同じような映像が流れる。

母親はテレビとダイエットの<中毒>なのだ。


実際、この映画で一番ヤバいのは、ドラッグ中毒の息子ではなく、テレビ中毒の母親だと思う。
彼女はおかしい。一番狂ってる。



なのでまぁ、この映画は「ドラッグは危険だなぁ」などという陳腐なものではないのだと思う。

この映画の本質は、母親がダイエットサプリメントとテレビで破滅してしまったように、
「各人にとっての”ドラッグ”は、どこにでも潜んでいる。破滅の道はすぐそこにある。」
という恐怖を、鋭く描いたところにあると思う。


本作は英エンパイア誌による「落ち込む映画」ランキング第1位、という栄誉(?)も得ているが、私の場合はセンス抜群の映像の連発に落ち込むどころか、むしろ興奮してしまったのである。


公開:2000年(米)
監督:ダーレン・アロノフスキー
音楽:クリント・マンセル
出演:エレン・バースティン、ジャレッド・レト、ジェニファー・コネリー