相米慎二特集にて。
相米作品は大昔にちっこいテレビで『台風クラブ』と『セーラー服と機関銃』を観て以来ですが、これら2作は記憶がだいぶすり減ってはいるものの、演出とか美術が摩訶不思議な印象が強く残ってて、当時はよく分からず睡魔にも襲われた記憶。今回初めて大画面で未見の相米作品を拝見しましたが圧倒されました。
レンコの心情が大きく揺れ出す後半戦は不思議な演出と、目を見張るような美しく幻想的な映像が畳み掛けてきます。特に印象深いのは炎の描き方。序盤にテレビから流れる不審火の報道から始まり、レンコの感情の爆発によって灯されるアルコールランプ、束の間の家族団欒を過ごすレンコたちを見つめる大文字焼きと盆提灯、レンコを知らない世界へと誘ってるかのような滋賀の火祭り、そしてクライマックスのアレなど、炎が毎回姿かたちを変えてレンコの前に登場します。レンコに対して、時に優しく、時に厳しく燃え上がる炎はまるでレンコの相棒、もっというと親のようにも映ります。いつかは儚く消えてしまうという意味でも。表現も語り口も日本的な美しさがあるというか、これぞ世界に誇れる日本映画って感じがします。
でもやっぱり昔と同じく、不思議演出には頭クラクラして「どゆこと!?」となってしまう部分もありました。
祭で人がごった返すところでのあるシーンはパンフ読むとゲリラっぽいのですが、だとしたら狂気を感じる笑!あんな密な状態でよくあんな重要なシーンを撮りきった!
笑える演出もたくさんあって、特に学校から抜け出し疾走するレンコを母ナズナと鶴瓶先生が追いかけるシーンがお気に入り。漫画のような微笑ましい名シーン。微笑ましいといえばミノル…なんてエエやつなんや。。
中井貴一や鶴瓶のコメント読むと、相米監督という人は変わってて面白そうな人という印象を受けます。動く相米慎二を見たことがないので、ドキュメンタリー映像とか探してこの人のことを深く掘っていきたいです。
そういえば4Kリマスター作品は何本か観てきましたが、本作は今までのどの作品よりも上出来な気がします。最近撮影したんかと思ってしまうぐらい画面がきれいでした。「ヴェネチア国際映画祭 最優秀″復元″映画賞」受賞というのもわかる…ていうかそんな賞があったんか!
『夏の庭』が早く観たくてしょうがない。今回の特集を機に『台風クラブ』と『セーラー服と機関銃』もリベンジしたい!
📖パンフレット情報・感想📖
爽やかで可愛らしいデザインですが、中身は相米慎二×山根貞男の公開当時の濃厚対談や、撮影・栗田豊通によるデジタルリマスター関連の話や撮影秘話など濃~い内容が盛りだくさん!
『お引越し4K』の4国のポスター紹介も嬉しい。北米版ポスターのデザインが離婚届まんまという斬新さに惚れ惚れ!
※パンフ情報
【¥】1000円
【収録内容】
・公開当時パンフの表紙
・ストーリー
・キャラクター紹介、キャストプロフィール&コメント
・インタビュー「『お引越し』撮影監督/栗田豊通」
・《評論家》山根貞男×《監督》相米慎二 対談「本流の映画と片隅の映画ー『お引越し』をめぐってー」
・コラム「『夏の庭 The Friends』撮影のバックヤードで見たこと、感じたこと」(金原由佳:映画ジャーナリスト)
・相米慎二プロフィール
・相米慎二フィルモグラフィ
・レビュー「相米慎二の二都物語」(吉田伊知郎:映画評論家)
・コメント集
・ポスター紹介