一

敵の一のレビュー・感想・評価

(2025年製作の映画)
4.2
ある意味、吉田大八監督最初の到達点と言えるような怪作であり傑作
現代モノクロームをここまで効果的に使った映画を久々に見られたという感動すらあるので、前作『騙し絵の牙』で見限ってしまった吉田フリークの方々も今すぐに劇場へ

もはや笠智衆にすら見えてくる色気だだ漏れの長塚京三が、モノクロームでスクリーンに存在しているだけで映画として成立してしまっているのだけど、ただただ日常を映し出すだけの前半も、美しい構図やカットが相まってとてつもないクオリティ
なにより、見方によってはこれが本当の孤独のグルメなのではと言いたくなるほど、長塚京三の食事シーンの映え方が尋常じゃなく良い

小津安二郎や成瀬巳喜男、川島雄三のエッセンスを散りばめ、文学的でありながら時折ちらつかせる品のあるユーモラス
実力ある監督の手にかかれば、こうしてエンタメ性度外視で本当に撮りたい作品をブラッシュアップするだけで、これほどまでのレベルに引き上げてくるから、やっぱり邦画も捨てたもんじゃない

2025 劇場鑑賞 No.002
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