しばらく白黒映画を劇場で見ていなかったので、久しぶりにこういうのもいいかなと思い見に行きました。問題点もあると言えばありますが、見終わった後の感想としてはけっこう満足させられました。見てよかったです。
この映画の主人公はすごくリアルだったというか、今まで見た映画の中でもかなり上位に入ってくるくらいに自然な感じで気持ち悪さが伝わってきました。人間としてあるべき欲望をもろに伝えてきているのですが、それが押しつけがましくなく、かなり自然な方法で表現していました。
映画全体が白黒で暗い部分を強調しやすく怪しい雰囲気を出しやすいのですが、それを存分に活かした気持ちの悪さが映画中盤以降かなりにじみ出ていました。別に普通に大人らしい真面目な姿も見れるので、人間らしい両面性を描いていて、かなり興味深いキャラクターだと言えます。
後、演技も素晴らしかったです。主人公が料理をしていたり歯磨きをしていたりなど日常を垣間見るみたいなシーンが多いですが、それもかなり自然な光景だったなと感じます。特別このシーンが素晴らしいというわけではないのですが、映画全体を通してかなり自然な生活っぽく見えていたように感じます。
技術面やキャラクター性はかなり素晴らしかったですが、脚本がちょっと悪かったというか、映画の話が始まるのが遅いし似たようなことを繰り返しているし、話も先読みしやすかったです。なので、この映画は100分くらいな一方で、体感的には130分くらいに感じました。
やりたいことをゆったりと描いて人間らしさやリアルな生活感を描きたいはわかるのですが、もっと話をスマートにするか、尺をもっと短くしても良いなと思いました。
上で言った問題点がだいたい後半部分に集約されているので、映画を見終わった直後はけっこうもやもやしてましたが、しばらく時間を置いた後はいい映画だったなぁと思っています。
白黒映画なので精神的ハードルは高いかもしれませんが、おすすめ度はけっこう高いです。