もったいない。
何が。
シナリオだ。
シナリオの何が。
ドラマ部分の過剰な詰め込みの整理が必要だ。
物語の中で描かれる要素が多岐にわたるため、
取捨選択をもう少し意識して整理できれば、
全体のテンポや見やすさが大きく改善されたのではないか。
特に、キャラクターの内面や状況を描くシーンが重なり合い、
物語がやや煩雑に感じられる瞬間が多かったのが残念だ。
一方で、アクションシーンの技術は高い、
火力の使い方や現場での生の爆破とVFXの絶妙なバランスは、
エンターテインメントとして十分に魅力的で、
観客を引き込む力を持っている。
それだけにドラマ部分が過剰になっている点が、
もったいなく感じられる。
「平和維持軍が現地に派遣され、想定外の経験をする」
という枠組み自体は、
過去にも多くの作品で取り上げられてきた題材であり、
その中で描かれる「軍人としての規律」「組織としての正義」「人としての葛藤」などは、普遍的なテーマで共感を呼びやすい。
しかし、本作はそのすべてを同時に扱おうとした結果、
どれも中途半端に感じられる場面が散見される。
個人の葛藤を深掘りするのであれば、
現地の背景や国情をもう少しシンプルに薄く描く方がよかったかもしれない、
また、逆にその国情や社会的背景を深く掘り下げるのであれば、
個人の内面やドラマにフォーカスする部分を削減するべきだろう、
例えば、
ユーとヤンの個人的なドラマに焦点を当てるのであれば、
証人警護の一連のエピソードを削除して、
より深く彼らの関係性や葛藤を描くことに集中した方が良かっただろう、
逆に、
証人警護という重要な任務を扱うのであれば、
ティンと子どもたちとの関わりの描写を省略しても、
物語は十分に成立したのではないか、
このようなシンプル化の手法は、
より一層ストーリーを引き締め、
観客にとっても視覚的・感情的にアクセスしやすくなるはずだ。
もちろん、
これらの点はシナリオ制作時、撮影、編集の現場において、
十分にシミュレーションされていることだろう、
それでも、「全部乗せ」を選択したということは、
テンポや物語の整合性よりも、
こうした多様な要素を詰め込んだ作品の方が、
観客に受け入れられるという判断があったのかもしれない、
多くの要素を詰め込むことで、
広範囲な層にアピールしようとした意図が見え隠れする、
その分、作品の精緻さや深さが犠牲になっている部分も否めない。