荒野の狼

激突!格闘技 四角いジャングルの荒野の狼のレビュー・感想・評価

2.0
「激突!格闘技 四角いジャングル」は1979年の作品で、プロレス、極真空手、キックボクシング、ムエタイの試合の一場面を集めて構成した内容。1978年の「格闘技世界一 四角いジャングル」と同じ映像が随所に使われており良心的ではない映画(ベニー・ユキーデの試合の大部分、坂口征二と上田馬之助の乱闘など)。プロレスは、アントニオ猪木対ヒロマツダは比較的長い時間が収録されているが試合の名場面を選んだとは思えないダイジェスト版、アントニオ猪木対ミスターXは3Rで決着がついているので試合の全長といってよい内容であるが、ミスターXが実力不足で特に見せ場もないままに終了。他に藤波辰爾、マサ斎藤、坂口征二、上田馬之助らも登場するが、場外乱闘や凶器攻撃などの場面が多く、特筆すべきものがなく早送りしたいようなシーンを集めている。なぜ、このような魅力のないシーンばかりを収録したのか疑問が残る。唯一、素晴らしいのは、オープニングに数秒だけ収録されているアニマル浜口のエアプレーン・スピンで回転のスピードと切れの迫力は、本作のどのシーンより印象に残る。本編には、このシーンが含まれておらず残念だが、プロレスならではの圧倒的なパワーとパフォーマンスであり、浜口を見直す視聴者も多いのではないか。
極真空手は四国の美しい松山城の訓練風景、瓦割やバット折りなどのパフォーマンスは華やかであるが、試合は顔面への素手の攻撃が禁止ということでボディへの打撃技が中心で肉弾戦であり、試合の名場面の編集の仕方もまずく魅力的な内容になっていない。
キックボクシング・ムエタイは、ベニー・ユキーデと藤原敏男を友情関係にあるライバルとして取り上げるが、二人ともシャドーボクシング・キックの練習風景がキレがありカッコいい。試合はユキーデは内藤武士をバックスピンキックで悶絶KOさせたシーンと、大貫忍を一本背負いと腰投げの複合技で豪快に叩きつけたシーン(ルール違反で当初は反則負けの裁定となった)ではユキーデの凄さが感じられる。階級が2階級上のムエタイのプラユット・シーソンポップとの対戦は、ユキーデには気の毒で、ユキーデは体重を増量してキレがなく、シーソンポップの首相撲と膝蹴りに苦労して判定負け。そもその階級がこれだけ違う相手を戦わせるのが間違いで、現代であれば組まれるべきではない試合。藤原はムエタイのシープレイー・ガイソンポップとの闘いの一部が2戦収録されており、タイでの判定負けを日本でKO勝ちで雪辱しているが、後者では長身のガイソンポップに藤原はアッパーを何度も決めているのが印象的。
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