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ファニーゲーム U.S.A.のpikaのレビュー・感想・評価

ファニーゲーム U.S.A.(2007年製作の映画)
4.5
オリジナルもほぼ同じ構成なので改めて見てもオープニング最高!
オープニングでこの映画のスベテを瞬時に説明して見せる演出に痺れてクラクラする。

何でほぼ同じ構成でセルフリメイクしたのかって、これが暴力映画に対するアンチテーゼだからアクションや暴力映画を量産するアメリカへ、奴らは字幕作品を見ないから作ったというよりも、ハリウッド映画ならより多くの世界中の人々の目にとまるから、ということかも知れないけれども、そういうことよりもほぼ同じ作品を自らの手で二度作るという行為そのものに「悪意は終わらない」「何度も繰り返される」という意図があるんじゃないだろうか。同じモノの手によって。
それに加えて両作見た観客が「オリジナルの方が好き」「ハリウッド版オススメ!」「違いは・・・」などと作品を比較し合うことや、この内容の作品を虚構としながらも「どっちが好みか、不快か、胸糞か」などと意見を出し合わせること自体も作品の延長で、そこまで行って始めてハネケの意図する作品が完成されるような。
だから二作作る必然があり、今作で、またはさらに作り続けていくことで作品の意図は完成されつつ増殖していく感じがする。

そんなハネケのニヤリ顔を嬉々と受け止めつつ感じたオリジナルと今作の違いは、前作で観客が違和感を抱いた部分を訂正、説明し直す台詞変更や、10年近く経ってからのリメイクだからなのか、全体的に映像が綺麗で明るかったり中盤の長回しが静から動的へと変更されていたり、その直前の目玉シーンの余韻もない、ところからテンポよく「軽快」な印象が強まっていて、ある意味絶望感や緊張感が薄く、ハリウッドらしいゆるさみたいな、映画=虚構である安心感みたいな空気が常にあり、オリジナルにあったリアリズムと虚構性のズレが曖昧になっている。
それは元のオーストリアという国民性が感じるリアリズムから、アメリカへと作品自体が歩み寄って「君らの陣地へ」侵入したカメレオン的な意図を感じる。
他国の、他者の問題じゃないよ、君らのよく知る世界観でも起きている「日常」だよと、そういう意味でリメイクしたような。

無理な話だけど、世界主要国それぞれでハネケによるセルフリメイクしてくんないかな、日本バージョンも見てみたいと思わせるカメレオンぷりに感動しつつ、日本はヨーロッパの雰囲気に近いからなのか個人的にはオーストリア版の方が好きだなぁと、もうDVD買っちゃおうかなと思い始めた。
ただ今作の娯楽的過ぎる胡散臭さはイライラをさらに冗長させているので、それもまた一興、という味わい深さもある。
結果、どっちも最高!
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