抹茶マラカス

どうすればよかったか?の抹茶マラカスのネタバレレビュー・内容・結末

どうすればよかったか?(2024年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

よーやく見れました。
統合失調症になってしまった姉、その姉を家に閉じ込めてしまう医学部出身、医師であり親である父と母。そして彼らを撮り続けた弟。当事者性の極めて高いドキュメンタリー映画。
症状が出てから撮り始めたわけでもないので、序盤は状況説明とかなり拙い映像で少し減退するのだが、そこから徐々に弟が介入度合いを高めていくにつれてドキュメンタリーとしての強度が上がっていった印象。両親の死で終わると思い込んでいたので、姉が亡くなり父が存命で終わる残酷さには驚いた。
弟は第三者の介入で姉に治療を与えることを要求し、母は父の壁が突破できないと言い、父は母の決断を尊重したという。家庭の問題にカメラを持ち込むことによって、家族という点では何かこぼれたものがあるのかもしれないが、しかしカメラを持ち込んだことで弟の存在は内部であり外部であるという存在になったことで、ドキュメンタリーとして存在する意義の極めて高い作品になったと思う。
どうすればよかったか?という問いは、内部にいると発しづらい問いであり、その問いが監督から出たことこそが、カメラを持ち込んだことの功罪そのものであったように思える。カメラを持ち込んだことで20世紀末からの生活史、後期高齢者に突入していく記録(徐々に乱雑になる家)、医学の介入によって劇的に変わる状況など、見るべきもの、見て驚くものは多い。
ただ、巷に溢れる介護にまつわる悲劇なんかを思えば、この映画できちんと見送れている、それ自体がこの両親は娘のことを愛していたと言えるのが本当に救いにも思える。同居ではない家族の視点で描かれる本作、同居していた父母が投げ出してしまう未来だってあったはず。
国家試験からの解放が求められたこの姉に対して、監督にとってはこの作品を作ることが解放であり、後悔であり、セラピーでもあるのだろう。