☆俺基準スコア:2.5
☆Filmarks基準スコア:3.7
1972年9月5日、ドイツ・ミュンヘンで開催中の夏季オリンピック大会…
早朝、選手村近くにあるABC放送調整室にディレクターのジェフ・メイソンが到着。それまで徹夜で中継を続けていた夜シフトのスタッフは帰宅し、総合プロデューサーのルーン・アーリッジもホテルに戻った。編成チーフのマーヴィンは仮眠をとり始め、ジェフが日勤スタッフのまとめ役となる。今日の段取りを右腕のジャックと相談し、機材トラブルの修理などを手配していると、選手村の方角から銃声が聞こえてきた。そこで通訳マリアンネを使って情報収集を開始したジェフは、何者かがイスラエル選手団の部屋を襲撃し、選手たちを人質に籠城したことを知る。直ちにジェフがルーンを呼び戻すと、ルーンはスタッフを総動員し、放送衛星使用の枠もCBSから奪ってまで生中継をしようと動き出す…
「セプテンバー5」
以下、9億人が目撃した世界初のネタバレ生中継。
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スピルバーグの「ミュンヘン」でも描かれたテロ事件を報道側からドキュメンタリータッチで描いた作品。手触りはポール・グリーングラスの映画のようで、緊迫感溢れた一本になっていました。犯人側が指定したデッドラインはもちろん、衛星使用のタイムリミットなど大小様々なスリルが散りばめられていて、地味なストーリーながら緊張感が持続します。
内容的には…
TV報道における「欲」と「熱」と「非情」についての映画だったな…という感想。ジェフ・ルーン、マーヴの3人が体現するのは、世紀の大スクープを俺たちの手で報道するんだという欲と熱。そのために困難なミッションをアイデアで切り抜けていくのがまず面白かった。でもそんな中で、人質殺害のモロな場面を映していいのか?警察突入の様子を、犯人たちが見ているTVで生中継していいのか?という「報道の自由」と「ヒトとしての良心」の間の葛藤も描くことでキャラたちの人間味を増すと同時に、観客に問題提起をしてくるんですね。自分の掴んだニュースにのめり込み情報精査が不十分のまま誤報をしてしまうリスク、「現場」を見てしまったことによる精神的トラウマなども語りつつ、最後に観客に突きつける衝撃…それは事件の結末ではなく、中継後の風景でした。ルーンは既に明日の中継のことで作業を始め、レポーターのピーター・ジェニングスはルーンと打ち合わせをしようと準備万端。その変わり身というか順応性というか…半ば放心した感じのジェフやマリアンネの反応が普通だと思うけど、放送は止まることなくスタッフも休むことは無いんですよね。その非情さに苦味を感じたな。
ことさら事件を深掘りするわけでもなく、報道の在り方を強く説くわけでもなく、淡々として劇的ではないのだけど、空気のヒリヒリ感は一級品のサスペンス。オススメ。
…それにしても1972年はTVに釘付けな年だったんだな。2月が浅間山荘で9月がミュンヘン…これまで俺の生まれた1972年は「沖縄返還」「ダーティハリー公開年」「太陽にほえろ!放送開始年」と記憶していたがミュンヘンも加えておこう……