pika

サンセット大通りのpikaのレビュー・感想・評価

サンセット大通り(1950年製作の映画)
5.0
何が凄まじいかってまず「本物」を起用しているリアリティ。
サイレント映画で曾て世界中を魅了した往年の大女優ノーマ役に、本当にサイレント映画で栄華を放った女優グロリア・スワンソンを起用し、ノーマと共に12作も作品を生み出した旧友の監督役に、本当にグロリア・スワンソンと仕事をしていたセシル・B・デミル監督をカメオ出演させ、サイレント映画界で完全主義者の怪物と言われたエリッヒ・フォン・シュトロハイム監督は、これまた本当にグロリア・スワンソンと仕事をしており、今作ではノーマの初期作を監督し、彼女に魅せられ執事となったマックスを名演させる。

絶妙なテンポやカットの切り替え、画面に構成されている人物や背景、小物の配置や、うねる様に漂うカメラワークによって巧みに目線を誘導され目を逸らす隙がなく、シーンひとつひとつを丁寧に観客が飽きないよう作り込んでいる。
主要な登場人物は3〜4人足らずで、舞台も基本的にノーマの住む邸宅がほとんどであるのに次々と展開していく物語に心を奪われ、人物の行動や行く末が気になって夢中になる。

描かれるキャラクター達の過去や未来、そして今生きている人生、本人にとって他人にとってどんなものなのか。
自分で自分を信じていたいと願う想い、他人と自分の見ている世界の違い、同じ場所に立っていて共有するものと相容れない感情。
キャラクター描写が抜群に上手く、映画に映っている以上の奥行きをそれぞれに感じることで生き生きとした真に迫った魅力を放ち、感情を汲み取ることで物語を存分に味わうことが出来る。

今作の集大成とも言える、映画に於いて「本物のクライマックス」を体感出来る凄まじいラストシーンは痺れた。
pika

pika