いやあ、これはもう「シン・ガンダム」だな、と思いました。
世界観、時代、登場人物は完全に初代ガンダムと同じ。
キャラクターデザイン、絵柄、演出、音、音楽までもが初代を踏襲している。
モビルスーツこそ多少いじられているものの、基本的な造形は変わっていない。
初代好きは涙ものだろう。
で、何を描くのかというと、初代の世界で「もしも」違う出来事が起こっていたらの物語なのだ。
もしもガンダムが連邦軍ではなく、ジオン軍の物になっていたら……。
初代のファンは「あの物語がどう変わっていくのか」にワクワクできるし、架空の歴史の物語自体が面白いので知らない人でも十分に楽しめる。
ファンに向けただけのものにはしない、という製作陣の意志は強く、きちんと説明なども盛り込まれている。
(それを初代を彷彿とさせるナレーションなどでやるのがまたたまらない)
ある事件が起こり、物語は急変する。
そこで舞台が一変し、スペースコロニーの女子高生の話になるのが、またすごい。
こちらはキャラデザから何から何まで現代アニメ風。
本当にガラッと変わるのだけれど、戦場とコロニーの違い、ということで妙に納得させられてしまう。
さらに面白いのは、ジオン軍の物語は継続中で、コロニーの物語と密接に絡んでいるところだ。
アニメは現代よりにやや変わるが、初代のガンダムの世界観と新しいガンダムの世界観が、同じ世界の話として描かれていくのは、あまりにも新鮮だった。
映画はあくまでもテレビシリーズの冒頭部分のみの話なので、この先どうなっていくのかはわからない。
が、少なくとも、導入部分としては最高の出来になったんじゃないだろうか。
総じて、ガンダムを愛してやまない人たちが、全力でもって、古くて新しいガンダムを作ったという感じ。
試みは魅力的だし、ガンダム愛にも溢れている。
なにより、話が圧倒的に面白い。
テレビシリーズも絶対に見たい、と思わせられる作品だった。