アキラナウェイ

Dear フランキーのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

Dear フランキー(2004年製作の映画)
3.7
あれ、この子、何で喋らないんだろう。
ああ、そうか。
耳が聴こえないのか。

奇しくも聴覚障がいをテーマにした映画やドラマが続いている。

スコットランドの港町。
母リジー(エミリー・モーティマー)と息子フランキーは祖母も連れて引っ越してきたばかり。父は世界中を航海し続けている船乗り。フランキーはそんな父と文通を繰り返している。

しかし、それは母がついた優しい嘘。

実の父の虐待が原因で聴力を失ったフランキー。リジーは、夫のDV被害から逃れる為に引っ越しを繰り返していた。文通はリジーによる成りすまし。ある日、父が乗っている設定だった船が町に寄港する事になり、リジーは友人マリーから紹介された見知らぬ男(ジェラルド・バトラー)に1日限りの父親役を依頼する。

フランキーとリジーの代筆による架空の父親との文通のやり取りが実に微笑ましい!!

父親から今は世界の何処を航海中だとか、航海日誌の様な手紙と合わせてレアな切手が届く。フランキーは切手をスクラップブックに1枚ずつ、丁寧に保管して、父親に返事を書く。

何でそんな嘘を…と思ってしまうが、
息子の心の声を聴ける唯一の手段と知って、
やめられない母の気持ちが胸に沁みる。

一回り細身のジェラルド・バトラーが「過去、現在、未来の無い男」を演じる。

うまく話を合わせると、
フランキーが目を輝かせ、抱きついてくる。
本当のパパなんだ、と言わんばかりに。

こんなの、泣くわ。

父親に成りすました男と、フランキー、リジーとが、家族の時間を過ごす。嬉しそうなフランキーを見ていると、たとえ嘘でもいいじゃないと思えてくる。そりゃ、嘘は良くないけど、これも母が息子を思うが故の決断。

兎に角、優しい。
それがたとえ嘘でも、優しい。

ラストシーンで知る真実。
フランキーもまた、優しい。

最後のどんでん返しがさり気なさ過ぎて、少し物足りないけど、悪くない。

派手さはないが、スコットランド訛りと、登場人物の優しさが心の隅々まで沁み渡る良作。