上映していた映画館の惹句は、/「君の憎しみが私を咲かせた」――マットレスに咲いたカビのロードムービー 別れた恋人のマットレスに咲く愛と悲しみを食べて育ったカビの花。人間の背骨を欲しがり、生命体になる。 奇妙で美しいストレンジャー。/というもので、確かにそんなお話がスクリーンに映っていたのですが、それがどういうことなのかさっぱりわからず、作品のホームページを覗いてみたら、監督/パク・セヨンのこんなコメントがあった。/別れた人々の間に残されたモヤモヤ、恨み、約束と呪いはどこへ行くのか? これらの抽象的な塊は、恋人が「生息」していたベッドで混ざり合い、カビを咲かせる。 カビのマットレスは旅をしながら、様々な感情に出会う。 この旅を続けることでこれらの塊が行き着く先、さらにそこで何が待っているのかを 垣間見ることができるかもしれない。/
呪いですよ。そういえば恋人と別れた女子が、死ね死ね死ね、と街中を呟きながら歩いているシーンがあって、完全にイッちゃっている彼女の呪いが、恋人と絡み合った後のベッドの上の記念としてある愛液や汗から生まれたカビに伝播していくのです。
♬ア・ア・ア イミテイション・ゴールド/ア・ア・ア やけた素肌が/ア・ア・ア イミテイション・ゴールド/若いとおもう 今年のひとよ/声がちがう 年がちがう 夢がちがう/ほくろがちがう/ごめんね去年のひとと また比べてる♬(イミテイション・ゴールド/歌詞:阿木燿子)
男と女のすれ違う感情やら、愛欲やら、倦怠やら、愛憎やらそれらの積み重なりが第五胸椎に積み重なって、第五胸椎が発するにおいを嗅ぎつけるやにわかに自らのものとするためにそれを奪い世界を広げようとしていく。
♬さあさあ さあさあ/すっかりカタはついたわ/すっかりカタはついたわ/すっかりカタはついたわ/やってられないわ/その人の涙の深さに負けたの/bye bye bye bye やってられないわ/bye bye bye bye やってられないわ♬(絶体絶命/歌詞:阿木燿子)
身の回りの女と男を抉り取っても、そんな虚しい形しか見えてこない。果たして、本作のラストシーンの如く愛の結晶化とはそれほどに美しく淫靡な形なのだろうか。
映画館ストレンジャー 「君の憎しみが私を咲かせた」-マットレスに咲いたカビのロードムービー にて