2025年ベルリン映画祭コンペ部門選出作品。カトライナ・ゴルノスタイ(Kateryna Gornostai)長編三作目。2023年3月から2024年6月にかけて、ウクライナ全土の学校とその関連施設/関連人物を撮影した映像を並べ、戦時下ウクライナにおける学校教育の在り方と未来をモザイク的に構築していく一作。とにかくシェルター関連の描写が多く、授業中やテスト中でも警報が鳴るとすぐにシェルターに入ることが徹底されている。高校生たちはシェルターの中で先生とカードゲームをしていて、そういった一連の行動が日常化していることを窺わせるのが辛い。小学校低学年の生徒たちには"爆弾付きのぬいぐるみやボールは触っちゃダメ"と教えるのとかも辛い。年齢が上がると戦場へ行くことが現実化してきて、授業で射撃訓練があったり、OB訪問のように軍人が来たり、旋盤などを使った職業訓練のような時間に前線で鉄柵として使用する鉄棒を加工したり、ドローンの研究やシェルターを活かした新しい家の設計をしたり、かなり実践的になってくる。学校の横で授業の一環のような形で軍事訓練を行っていたのは、そこに女子生徒もいたのも含めてHeiny Srour『The Hour of Liberation Has Arrived』を思い出した。前線や国境に近い地域でもオンラインを通して教育は行われており、ある教師の家では教師の部屋で生徒たちに講義しながら、別の部屋では教師の子供が別の教師の授業を受けているというシーンがあったり、青空教室オンライン版のように屋外の黒板を使ってオンライン授業しているシーンがあったり、とにかく戦争によって教育機会を奪わせてはならないという思想が徹底されているのがパワフルだ。終盤で登場する、リトアニアの資金で建設中の高校がまだ骨組みのままで放置されていることに学生や教師陣が抗議してる一連のエピソードはまさにその思想が学校サイドだけでなく当事者全体に共有されていることが分かる。クリミア併合やドンバス戦争から既に10年が経過しており、現在高校生の子供たちも当時8歳とかだったと話していたのも印象的だった。ただ、基本的にいつまでも続けられる題材で125分は流石に長く感じられ、90分くらいにまとめられないのはちょっと残念だし、途中で何度か変な音楽が付いていたのも気になった。