さわだにわか

若き日のリンカンのさわだにわかのレビュー・感想・評価

若き日のリンカン(1939年製作の映画)
4.2
殺人の瞬間さえ劇的に映さないのっぺりと進む映画なので終盤の大逆転にびっくりしてしまった。『十二人の怒れる男』のヘンリー・フォンダ起用はそうかここからか、と実際のところは知らないが勝手に深く頷く。最後まで諦めず尻尾を出さずに自分は狂言回しに徹して人々に自由に語らせ、自明ではない真実へと導く人。これがアメリカ人が求める権力者のひとつの理想像なのだろう。

アメリカ映画の法的劇に外れなしの法則に従い法定場面も見どころだが、はにかみ屋で朴訥な青年前期、自信過剰で強情な青年後期、そして大統領の誕生を予感させるラストの威厳に満ちた表情と、場面によって異なるリンカーン像を見せるヘンリー・フォンダが素晴らしく、草木や窓枠を巧みに用いてその一つ一つを額縁に入れるような絵作りもあって、これがたいへん見応えがある。

生活臭あふれる馬車の質感や丸太割り競争とかいう貧乏にも程がある遊びで農民たちが死ぬほどエキサイトする独立記念祭の場面なども面白く、隙がない映画だった。
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